小学館新書 怖い仏教（小学館新書）

著者名：平野純【著】

小学館（2020/04発売）

• ISBN：9784098253623

内容説明

残酷でエログロに満ちた仏教の原風景。

仏教といえば、「悟りをめざす清らかな教え」というイメージを持っている人が多いと思います。ところが、仏教のはじまりは、そんなイメージとは正反対。
あまりに人間臭く危険なドラマに満ちていました。

たとえば、ブッダからして、仮面夫婦状態の末に、妻を捨て去った元王子。そして、弟子たちといえば、美女の死体に欲情する者あり、獣と交わるものあり、お寺に放火して逃げ出す者あり。おぞましい姿ですが、これこそが人間であり、また、仏教の原風景でもあるのです。

本書では、修行者の戒律をまとめた仏典『律蔵』などを手がかりに、恐ろしくも人間味溢れる仏教の真の姿を紹介します。

＜著者プロフィール＞
平野／純（ヒラノ／ジュン）・・・１９５３年、東京生まれ。作家・仏教研究家。東北大学法学部卒業。１９８２年「日曜日には愛の胡瓜を」で第１９回文藝賞受賞。作家活動と平行してパーリ語、サンスクリット語を習得し、仏教（特に仏教理論と現代思想の関わり）を研究。著書に『謎解き般若心経』『はじまりのブッダ』（ともに河出書房新社）、『裸の仏教』『ブッダの毒舌　逆境を乗り越える言葉』（ともに芸術新聞社）などがある。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[みのくま]

ぼくは仏教にはいつもエロティックなイメージがやけに付いてまわる事が不思議だった。清廉潔白なものと退廃・堕落したものが常に隣同士で存在している、その根源がまさに本書で語られている。ブッダの異常な女性嫌悪や祇園精舎のホモソ感。度重なる弟子の下半身問題とやけに具体的な禁欲主義。そこには現代社会でタブーとされるヤバい事(死姦・獣姦など)がほとんど組み込まれている異様さもある。そしてそれは当然仏教の本質に根差されているのだ。本書の最後は「陽物涅槃図」で締め括られる。「煩悩を滅しようと躍起になった仏教の煩悩」を見た。

2021/05/12

[イカカイガカ]

ブッダのもと、仏教が形作られていった過程で起こった教団における闇というか、今の人からしたらびっくりな出来事の数々。それは主に弟子たちの性にまつわるものが多いわけだが…。それらが分かりやすく、且つ面白く読める。〈ブッダの高邁な教えを「ハス」の花とするならば、これらはそれを支え、咲かせる「泥」にあたる部分の問題です。本書は仏典の背後にひそむ人間ドラマをあつかう、とまえにのべました。仏教の「本質」と呼べるものは文字通りドロドロしたこの土壌、「泥」をつかんで始めて理解できるものです〉

2020/04/12

[Reman]

聖人君子のイメージとはかけ離れた人間仏陀は、「無常」を発見した歴史上希にみる天才で、教団内で教えに心酔した僧侶達が集団自殺を起こすほどのカリスマ性があった。 禁欲、無神論を教義とし、死体が朽ちる様を観察することを修行とするカルト集団がもし現代にいたらどうだろう？誰が指示しするのだろうか？ そんなイカれたカルト集団の爆発的な熱量が、2000年以上も続いているとしたら、それこそ怖い話しだ。 しかし、蓮の花の美しさを知るには泥の醜悪さを知らなければいけない。この本は、手のひらで泥をすくってみるには最適な本だ。

2020/08/03

[Arnold]

たいへん勉強になりました。著者が経典を直接翻訳しているので説得力あります。仏陀の顔形、性格、カリスマ性、大きな声での話術に長けた説法の雰囲気等をつかむことができ、アーリア人ではない故に差別を受けていたという環境、一部の修行僧の失態、など、著者の狙いどおり、蓮の花の泥部分を知ることができました。

2020/05/13

[No. renkon No. life]

まぁ、現代の一般的常識と言われるものからは「怖い」と言う表現は正しいかも知れないが仏教が生まれた時代ではここで言われる「怖い」は「怖い」では無いのでは無いかと思う。それに基本的に経典を基軸にしてる時点で仏陀の説いた仏教が怖いのでは無く、経典の内容が怖く、なぜそのような内容になったのかを読みたかったなぁ～と思う。Audibleで聞き流すにはこれはこれで楽しめましたけどね🤣

2023/06/15