ちくま新書<br> 保育園に通えない子どもたち ──「無園児」という闇

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ちくま新書
保育園に通えない子どもたち ──「無園児」という闇

  • 著者名:可知悠子【著】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2020/04発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480073082

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内容説明

目黒女児虐待死事件で、5歳の被害児は保育園にも幼稚園にも通っていなかった。このような「無園児」家庭に、虐待、貧困、発達障害などの問題があっても、その実態は表面化しづらい。日本全国に3歳から6歳児で9.5万人いると言われている無園児の実態と就園の障壁について、全国4万人を対象とした研究の成果と、無園児の家庭や支援団体への取材を紹介する。病児保育のNPO法人フローレンス代表、駒崎弘樹氏との「幼児教育義務化」についての対談も収録。

目次

はじめに なぜ、「無園児」が問題になるのか
「目黒女児虐待事件」に見る、無園児という問題
無園児問題との出会い
待機児童問題を通じて痛感した子育て支援不足
社会で子育てする文化が醸成していない
なぜ本を書くことにしたのか
本書の構成
第一章 「無園児」は、さまざまな問題を解く鍵になる
(1)どのような子どもが無園児なのか
日本では九・五万人が無園児と推計
幼児教育の多様な選択肢
保護者による幼児教育の選択
全国四万人を対象とした研究
なぜ無園児になりやすいのか
他の先進国での無園児の状況
(2)貧困家庭に育つことの将来にわたる不利
貧困とは
貧困は子どもの「今」と「将来」を脅かす
乳幼児期の「貧困」が最も有害
「貧困」が乳幼児の発達にもたらす二つのプロセス
(3)貧困の連鎖を断つ鍵となる幼児教育
ペリー就学前プロジェクト
社会的に不利な家庭の子どもにこそ効果がある
子育てストレス軽減による子どもの発達状況の改善
セーフティネットとしての幼児教育施設
第二章 「無園児」家庭の実態──取材を通して見えてきたこと
(1)当事者への取材から
発達の遅れを指摘され、保育園に入れなかったブラジル人の女の子
発達障害グレーゾーンで入園を断られた男の子
医療的ケア児が、保育園にも児童発達支援施設にも入れない理由
(2)支援団体への取材から
認定NPO法人PIECES代表理事 小澤いぶきさんに聞く
公益財団法人かながわ国際交流財団 多言語支援センターかながわ総括 富本潤子さんに聞く
NPO法人K 理事長 Oさんに聞く
第三章 周りができることは何か──国の政策、地方行政、地域の支援
(1)幼児教育・保育の無償化議論に子どもの目線を
無償化は誰のため?
機会の公平性の実現を
〇~二歳児に対する保育の必要性
(2)取り残された子どもたちを幼児教育につなぐ
無園児を把握する
無園児を幼児教育につなぐ
妊娠期からの切れ目ない支援
(3)障壁を取り除く①──申請のハードルを下げる
(4)障壁を取り除く②──多様な言語や文化への対応
増加する、海外にルーツを持つ子どもたち
就学の実態
幼児教育につなぐために
(5)障壁を取り除く③──障害のある子どもや医療的ケアの必要な子どもへの対応
障害のある子どもや医療的ケアの必要な子どもとは
障害児保育と児童発達支援
支援の地域格差
幼児教育につなぐために
(6)インクルーシブな社会へ
特別対談 幼児教育「義務化」がなぜ必要なのか? 駒崎弘樹×可知悠子
1 義務化の意義は何か
最も厳しい環境にいる子どもたちこそ幼児教育が必要
なぜ無償化では不十分なのか
フランスは義務教育を三歳からに引き下げ
2 義務化と言っても、毎日行かなくていい
本質的な意義は地域社会とつながること
幼児教育では遊びが重要
3 義務化へのハードルとは何か
待機児童問題
家庭で子どもを教育する自由
保育の質の評価
幼児教育施設の多様性
おわりに
【引用文献】【参考文献】
第一章
第三章

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きみたけ

58
著者は北里大学医学部公衆衛生学講師で公認心理師の可知悠子先生。3歳から5歳で幼稚園にも保育園にも通っていない児童は地域社会ともつながれないことから「無園児」と呼ばれており、全国で95000人もいるという。「無園児」の家庭では虐待、貧困、発達障害などの問題が潜んでいることも多く、著者による全国調査や当事者への取材を紹介し私たちに何ができるのかを解説・提案した一冊。巻末にはNPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹さんとの対談も掲載しており、幼児教育「義務化」がなぜ必要なのか述べられています。2024/02/05

ねこけし

15
無園児について、とてもわかりやすくかつ中立的な視点で説得力のあるデータを用いて解説されています。日本の幼児教育、保育サービスの問題が詳細に記載され、今後の子育て支援の在り方について考えさせられました。保育園に入るためのハードルの高さ、そのハードルを越えられない家庭の状況や子どもの障がいについてもよくわかりました。日本は子育てや福祉のサービスの充実については、後手後手にまわっていて対策の遅れを切実に感じます。どんな家庭でも障がいがあっても、子どもたちが健やかに育つことができる社会、未来を目指したい。2020/10/25

Schuhschnabel

7
とある講義の参考文献として読む。一本の疫学論文を前提知識をもたない人に説明するだけでもそこそこの分量になるということを知った。「保活」と呼ばれるような情報戦が、アイドルグループのコンサートならいざ知らず、保育という公共サービスで繰り広げられているのはおかしいと思っていたが、一方でその競争の参加資格すら得られていない人たちがその外側にいるということを改めて認識した。自治体は今後、割り当ての実務は人工知能に任せて、公平な保育の割り当てとはどのような形かを考える方にリソースを割いていくのが望ましいと考える。2022/11/29

ネギっ子gen

7
保育園や幼稚園に通えていない子どもたちのことを「無園児」と呼ぶ。その無園児の実態と就園の障壁について、全国4万人(国の統計では、9.5万人となっているが、公的統計調査の対象となっていない「認可外保育施設」や「幼稚園類似施設」に通う子どもが無園児にカウントされていることを留意しての数字)を対象にした研究の成果と、無園児の家庭や支援団体への取材を紹介。『37.5℃の涙』にも登場する、病児保育のNPO法人フローレンス代表・駒崎弘樹氏との対談も収録。この本の出版は、無園児の名付け親・駒崎氏に勧められたものとか。⇒2020/07/09

コピスス

6
お気に入りの方が読んだ本。外国人の子、医療的ケアの必要な子、発達障害の子の保育、さらには就労を必要としない「一時預り事業」までやるべき?ただでさえ、保育士不足と言われてるのに、誰がどのように保育すると思ってるんだろう。保育園や幼稚園が虐待を防ぐセーフティネットの役割をすることに期待して、幼児教育の義務化について書いているのだろうけど、そのためには園で働く職員の働く条件(特に給与)を上げていかないと、できるわけないよね。2024/02/27

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