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内容説明
昭和10年8月12日、陸軍省軍務局長室において、相沢三郎陸軍中佐に斬殺された永田鉄山陸軍少将。「永田の前に永田なく、永田の後に永田なし」とまで言われた昭和陸軍の逸材は、なぜ殺されたのか。永田が目指していたものは何か。そして、永田が生きていれば、日本は戦争への道を歩まずにすんだのか――。これらの命題に、永田の人物と構想を繙きながら、相沢や皇道派にも触れつつ、迫っていく。永田家所蔵の初公開写真や遺族の声も掲載。はたして、戦争は止められたか?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
47
一人の存在が一国の歴史を動かし得るか。本書の主人公、永田鉄山は、「永田の前に永田なく、永田の後に永田なし」とまで言われた日本陸軍の逸材であった。昭和10年8月12日当時陸軍軍務局長であった永田鉄山少将は、同じ陸軍の相沢中佐によって斬殺される。その後の日本は、翌年の二・二六事件を切っ掛けの一つとして、下り坂を転がっていく。著者は歴史のifとして、永田ありせば戦争は避けられたか、との問いを立て、たとえ永田鉄山が在世であったとしても、戦争は避けられなかったとしつつも、その様相は随分違ったものになっていったのでは2022/02/23
Y2K☮
33
皇道派の思想はそもそも天皇の意向に反している。だが狭い世界で育まれたがゆえの偏向した価値観の中で己だけが正義と思い込み、命を懸けて悪を裁こうと暴走してしまう悲劇はいつの時代にも起こり得る。義憤に駆られて決起し、命を散らせた末端と彼らを散々煽った責任を取らずに長生きする上官。この対比こそ戦前日本の欺瞞の象徴と感じた。自己愛にも似た精神主義で思考停止しない永田鉄山が健在なら総動員体制の主眼が変わり、学徒動員はおこなわれず、対米開戦及び敗戦は避けられなかったとしても、もう少し違った形で終戦を迎えられた気がする。2022/05/16
skunk_c
33
著者は若手の民間歴史研究者で、永田鉄山に対してすでにいくつかの先駆的研究があることに対し、それらを謙虚に利用しながら、「果たして永田が生きていたら先の戦争はどうなったのか」という歴史のifを敢えて立てようとしている。永田を高く評価し、遺族への取材の成果など、真摯な姿勢はうかがえる。ただとても論証したとは言えず、狙いは成功したとは言えない。また、例えばノモンハンについて「惨敗ではなかった」と書くが、それこそ本郷氏の言う「戦争の勝敗は被害の多寡ではなく目的達成したか」という本質を忘れるもので首肯しがたい。2019/07/05
terve
17
「永田の前に永田無し。永田の後に永田無し」とまで言われた昭和陸軍の逸材についての話。歴史にifは禁物だがそのifを述べているところに魅力があるのではないでしょうか。残念ながら、あくまでも推察であり、如何様にも解釈できる内容であるのでいささか物足りなさはあります。しかし、荒木貞夫と真崎甚三郎については良いイメージがないなぁ…2019/07/16
CTC
16
7月の祥伝社新書新刊。著者は『多田駿伝』の市井の研究者。川田稔氏ほかの先行研究が優れているため、「入る隙はないだろう」と著者自身も思っていた由があとがきに記されているが…私も永田についてはそれなりに本を読み、諏訪護國神社を訪った身ではある。おさらいをするような読書となったが、煩瑣な事柄がコンパクトに纏まっており、手取り早く永田を識りたいというウォンツには充分応える良書と思う。そして…ご遺族から提供されたという永田の写真については、本書が初出になるものが多いようで、圧巻だった。これだけで十分価値がある。2019/08/30