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内容説明
軍歌から「六甲おろし」「オリンピック・マーチ」まで、日本人の欲望に答え続けたヒットメーカー。
連続テレビ小説「エール」のモデルになった80年の生涯。
軍歌「露営の歌」、早稲田大学の応援歌「紺碧の空」、夏の甲子園のテーマ「栄冠は君に輝く」、「とんがり帽子」「長崎の鐘」
……。昭和という時代に日本人が求めた曲を作り続けた作曲家・古関裕而。
クラシックの作曲家を目指すも挫折し、
戦時中は軍歌でヒット曲を連発。
軍歌の帝王と称された前半生。
終戦後は一転してドラマや映画音楽から
社歌や自衛隊の歌まで作曲するなど
常に大衆音楽の担い手であった。
NHK朝の連続テレビ小説「エール」のモデルとなった
日本を代表する作曲家の80年の生涯を
新しい資料と丹念な取材で読み解いた一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
49
事実関係を踏まえた見通しの良い評伝。「露営の歌」を嚆矢とする軍歌の作曲が、古関先生の陰と言われるが、後年「あれは軍歌ではなく戦時歌謡」などと言い繕う必要などなかったという著者の指摘は正しいと思う。戦前は大学応援歌、戦中は軍歌、戦後はラジオドラマ、高度成長期には数限りない校歌・社歌そしてオリンピックと、古関先生の音楽は、イデオロギーとは関係なく、近代日本の歴史そのものである。いつも少しばかりの哀愁を湛えた上で、人々の士気を高揚する不思議な力を持っている。そんな古関作品の音楽的な分析があってもよかったかも…。2020/05/20
tomi
37
五千曲を作曲したという大作曲家・古関裕而の評伝。多くの資料を基に読みやすくまとめられており、古関の自伝に度々みられるという事実誤認も正している。古関の生涯を辿る事が昭和の大衆音楽史となり、昭和史にもなる。「軍歌の覇王」の異名を取った戦時下に多くの記述を割かれていて、三度に及ぶ戦地への慰問の様子も詳しい。古関をモデルにした朝ドラ「エール」も見ていたので、史実との違いや意外なエピソードも興味深く読んだ。2020/12/20
ころこ
30
4月から始まった朝ドラ『エール』の元ネタの生涯を描いています。郷土・福島では有名で、『エール』の制作誘致に盛り上がりをみせたようです。『六甲颪』の作曲家と知れば、親近感もわいてきます。注目するのは作曲数の多さで、5000曲といわれているのは多数産出している喩えで、最初のコロムビアとの契約条件は月平均6曲というものでした。明治に生まれ、平成に亡くなった古関は昭和に活躍しています。昭和の前半は軍歌をつくり、後半は大衆音楽をつくります。『オリンピック・マーチ』のような時代のメルクマールとなる曲もつくっています。2020/04/23
おっとー
14
一人の人物の評伝から歴史を描くという、筆者にとっての新たな試み。時折想像を交えつつも、研究者らしく史料の読み込みも欠かさない非常にバランスのとれた本。古関裕而は流行歌、軍歌、オリンピックマーチ、社歌、ラジオドラマ曲と本当に幅広いジャンルで作曲を手掛け、その一つ一つに昭和の歴史と彼の物語が詰まっている。その人生は良曲を多数残した成功者とか、軍歌に加担した悪者とかいった一面的な善悪論で語れるものではなく、時代の要請に答え、ひたむきに作曲を続けた一人の複雑な人間として捉えなければならない。2020/08/18
パラオ・スパニッシュフライ
13
古関裕而、なぜこの作曲家を知らなかったのだろう。福島に住んだこともあるのに、こんなにも身近に彼の曲が溢れているのに、彼のことを何も知らなかったなんて何かの陰謀と考えるしかない。日本が良くも悪くも一番輝いていた時代、昭和。古関裕而を知ることは昭和を知ること。戦前の大衆歌からはじまり、戦地に赴いて軍歌を作り、戦後はドラマ、スポーツ曲、社歌校歌そしてオリンピックマーチ。常に昭和日本の人々の心を掴んできた偉大な作曲家です。本を読んで彼の曲を知り、YouTubeで聴いて当時を憧憬。とても濃い時間を過ごしました。2020/08/11