内容説明
いとしい香港から戻ってみれば、違和感のなかに生きる私がいた。『転がる香港に苔は生えない』で大宅賞、『コンニャク屋漂流記』で読売文学賞を受賞した星野博美。銭湯とファミレスから透視した「東京」をめぐる39の名エッセイが、電子版で登場!
「銭湯に通っている。酔狂ではなく、切実に。三十を過ぎてから銭湯通いをするという将来を十年前には想定していなかった──」(本文より)
2年間にわたり香港に滞在していた著者は、1997年の中国への返還を体験した後、東京に戻り、中央線沿線でひとり暮らしを始める。
切なくも騒々しく、温かい街から戻ってみれば、違和感のなかに生きる私がいた。自分の存在そのものが異物になってしまったようだった──。
銭湯とファミリーレストランを周遊する暮らしから芽生えた思いを、鋭い観察眼と端正な文体で描いた39の名エッセイ。
解説・中野翠
※電子書籍化にあたり、新章「地中に埋まっている部分」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
団塊シニア
18
銭湯とファミレスを愛する作者のエッセイ。人前で裸になること、人の裸を見ることで様々な人間模様がることを語り、ファミレスに通う理由は喋らなくても人とつながっていたい、そして店員、客の人生の一瞬をシャープな観察力で描いてます。面白い一冊です。2012/04/05
おおにし
15
単行本で出たころ読んで感動して、文庫本を買いなおしてずっと本棚に眠っていた本。処分しようかと読み直してみた。どれも面白く再読できたが、特に中学校の歴史教師が「教科書をうのみにしないでください。そして、歴史をうのみにしないでください。」と語ったエピソードを紹介しつつ、当時話題となっていた「新しい歴史教科書をつくる会」を批判する話が今回印象に残った。2021/02/06
sonomi
10
文章を読んでいて、著者はよくも悪くも「可愛くない女」だと思った。私も「可愛くない女」な面があり、そのため共感する部分が多くあった。好きな項は『私がテーブルを買う時』、『百円の重み』、『冷たいうどん』、『新しい歴史教科書』、『エセ貧乏』、『純粋な我々』(“その場所に流れる空気を察知し、そこで期待される行動をとれることが上品、その空気に鈍感であることが下品”、との一言は深いと思った)で、表題になっている銭湯関連の話より他の話の方が面白い。2009/12/03
羊の国のひつじ
8
無意識に何かを選び取る、それをなぜそのように感じるのか文章に落とし込む。そんなエッセイ。何気ない毎日の風景から見えてくる日本社会の歪みに着目する観点がおもしろい。銭湯に出入りする人々を観察する視点にも魅せられる。自分も自分の着眼点で物事を見ることにもっと貪欲になろうと思う。居心地がよい文章で思わず一気読みしちゃった。2020/08/24
ねなにょ
8
『銭湯の女神』というタイトルと、『香港』という単語に惹かれただけで、手にした本だったけれど、面白かった。自身のことを、年齢性別不詳に加え、国籍不明と紹介している部分に、なぜかとっても好感を持ってしまった。正直で、強く、深く、しっかりと生きている人。他の作品も是非、読んでみたい。2013/06/20




