内容説明
より美味で、かつ丈夫、収穫量が多く、栽培しやすい品種を――。誰もが夢見る新品種を生むべく、自然と格闘する仕事が育種家だ。りんごの「ふじ」のように歴史に名を刻む有名種や、競争に敗れて頂点から転落した梨の「長十郎」など、品種改良をめぐる歴史は、育種家たちの情熱の結晶である。本書では、じゃがいもや大豆、大根、わさびなど7つの身近な食用植物を取り上げ、その進化と普及にいたるドラマを描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
98
昨年の種苗法改正の議論の時、全く知識のない私は、その意味が分からなかった。そんな時に耳にしたのがこの本の評判。なるほど面白い。ジャガイモ/ナシ/リンゴ/ダイズ/カブ/ダイコン/ワサビの七つの植物の育種をめぐる物語である。開発者の人間ドラマに心躍らせ、F1品種(一代雑種)の雑種強勢という生物学の基本を教えられ、それぞれの食物に対する知識が膨らむという何ともオイシイ一冊。早速得た知識で「男爵薯とメークインの違いわかる?」「ダイコンの青首と白首の違い知ってる?」などと、家内との会話のネタが増えたのも嬉しい。2021/02/21
佐島楓
79
普段何気なく口にしている野菜や果物。そういえば品種名まで正確に言えるものはごく少ないことに気づく。ましてや本書に書かれている病虫害との闘い、品種改良の苦労など考えも及ばなかった。直接かかわりはないけれど、いろいろな人に感謝しなければ。2020年一発目にふさわしい本。2020/01/01
skunk_c
61
『果物』に続きその前に出された本書を読む。出た頃から知っていた本なのになんでその時読まなかったのだろう。面白い。『果物』に梨とリンゴが出てこないのは本書に書かれていたから。御殿場のワサビとかだだちゃ豆とか結構縁のある話もあり、古典や俳句に登場する作物なども取り上げられているので色々な角度から楽しめる。まあじゃがいもについては中公新書に別の著者の単書があって、そちらの方が詳しかったけど。それよりこの著者の文章はリズムがよく読みやすい。「おわりに」を読むとかなり意識的と思う。大学の先生方に見習ってもらいたい。2025/03/06
アナーキー靴下
54
お気に入りの方の面白すぎるという評で気になり、さらに著者は「植物はヒトを操る」でいとうせいこうと対談していた育種家の竹下大学さんと気付き、これは間違いないと。内容は、日本の野菜・果物の品種改良に携わった育種家や生産者の奮闘を記した農業の歴史でありながら、消費者視点では食卓の歴史として身近に感じるもの。登場するのはジャガイモ、ナシ、リンゴ、ダイズ、カブ、ダイコン、ワサビ。人類の繁栄のため品種改良に取り組んだバーバンクらをレジェンドと仰ぐ著者。品種に関わった一人一人に敬意が溢れる、ポジティブで面白い本だ。2021/01/22
R
44
日本で作出された様々な作物の品種を紹介する本でした。果樹、蔬菜に注目していて、あえてコメが入っていないのがいいなと個人的に満足。リンゴの品種変遷の歴史と、考えてみれば当たり前な赤くないほうが甘いという事実が面白かった、なんで今まで気付かなかったんだろう。わさびというマイナージャンルでも、品種の作出ではないが選抜が行われているよう話や、品種がある事件をきっかけにして一気に広まるという商業や需要との密接な関係、生産者の技術向上などが非常に興味深くて面白かった。2021/01/09
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