内容説明
古関裕而(一九〇九~八九)は忘れられた名作曲家である。日中戦争中、軍歌「露営の歌」で一世を風靡、アジア・太平洋戦争下のニュース歌謡や戦時歌謡を多く手がけ、慰問先でも作曲に勤しんだ。戦後は鎮魂歌「長崎の鐘」、東京五輪行進曲「オリンピック・マーチ」、映画「モスラ」劇伴音楽と、流行歌からスポーツ音楽まで数々の名曲を残す。戦争、そしてテレビの普及まで、昭和史を彩った彼の生涯をたどる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
243
戦前戦後とヒット曲を生み続けた稀代の作曲家について書かれた一冊。私も野球してたので栄冠は君に輝くとか闘魂こめてなど今でもみんなが歌い継がれてる歌もあるので親近感のある作者。ほぼほぼ昭和史とリンクしていることに驚く。2020/06/21
へくとぱすかる
77
なぜこの人? と思ったら、次期朝ドラのモデルになったとのこと。世に知られるきっかけの作品が軍歌だったことが、その後の作曲人生に大きな影響を及ぼした。「昭和史の光と影」とあるように、戦中に活躍した芸術家には、戦争協力の責任論がつきまとう。古関裕而は戦後に長く、鎮魂の意味を持たせる作品を出し続けて、せめてもの償いにしたかったようだ。放送で聴いたことのある、あの曲この曲が、古関作品であることには改めて驚く。2019/12/03
パトラッシュ
45
古賀政男がアーティストなら古関裕而は職人だった。時代や体制の変化で浮き沈みした古賀メロディーに対し、日本人の不変の感性に寄り添ってきた古関の音楽は常に求められた。戦前戦中に軍歌で流行作曲家となりながら、敗戦後は『長崎の鐘』やミュージカル音楽を手掛けたのは何ら矛盾しない。自分の歌を歌いながら亡くなった若者を思って苦しむ夫を支え続けた妻の姿も美しい。手塚治虫と古関には今からでも文化勲章を追贈すべきではないか。二人がいなければ昭和文化は惨めで貧しいものになり果てていただろう。古関夫妻にこそエールを送りたくなる。2020/10/02
きみたけ
36
訳あって古関裕而の足跡をたどるために読みました。戦前、戦中、戦後と移り行く時代の中で、大衆の心をつかんで離さない見事な曲をたくさん世に送り出した古関さんは、本当にすばらしい方だと思いました。2020/08/05
terve
36
阪神ファンとしては『六甲おろし』の作曲家として有名な古関ですが、印象としては白でしょうか。過去は忘れその時その時の色に自分を染め上げる。そして、その時の自分を表現するといったイメージでした。『露営の歌』を始め、戦時歌謡を作曲したことから戦犯容疑にもかけられたのは時代の陰でしょうか。ただ、人柄はとても優しかったらしく、筆者は仏の古関とまで表現しています。最後、時代を供に駆け抜けた友人たちを見送っていく姿には寂しさを感じます。2019/12/15




