内容説明
2018年ノーベル医学・生理学賞は、J・アリソン/本庶佑の「免疫チェックポイント阻害剤によるがん治療法を切り開いた」功績に対し与えられた。しかし、この業績がなしとげられるには壮絶な前史があった……ペニシリンの発見にも喩えられ、ゴールドラッシュ並みの活況を呈することになる医学上の「ブレイクスルー」をめぐる、知と感動が横溢する傑作医科学ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zoe
17
The Breakthrough(2018)。細胞(もとの遺伝子)が複製する際の変性は、免疫の仕組みにより排除されていないと説明が付かない頻度で生じる。しかし、取り除かれずがんとなるには免疫に認識されない仕組みがあるはず。一方、感染症を患ったがん患者のがんが消えた例がある。そこには理由があるはず。IFNやIL-2などのサイトカインも調査されたが、最終的にわかったのはCTLA-4によって免疫のブレーキングをかける仕組みがあり、またPD-1も同じく免疫チェックポイントに関わっていた。メモ:CAR-T。2022/01/03
紅咲文庫
6
免疫療法ががんの治療法として確立されようとしている、この数年の大きな動き、突破口を見つけようと尽力している人々の話。自分の命を賭けて新しい治療を選択する患者、患者の生死を担って研究を続ける学者、信じて託す経営者たち。がん細胞と免疫細胞たちの駆引きは複雑で、お互いに様々な手が繰り出される。オセロのような黒白ではない、盤上に広がる将棋の勝負のようなイメージが浮かんだ。普段はブレーキをかけながらの制御が必要な程パワーを持つ免疫系、解き放った時のダメージの大きさも怖い。本庶教授の業績も付記に詳しくあり良かった。2020/04/08
vonnel_g
1
ノーベル医学・生理学賞を受賞したチェックポイント阻害薬とは何か、その着想の源(昔のがん患者に完治例があるとは!)、仕組み、まだ困難な今後の見通し。メラノーマで死ななくなるというのは本当に画期的だけれど、コントロール下に置くのはまだまだ長い道のりがありそう。本題と全然関係ない話だけれど、イマジン・ドラゴンズを好きな女性をからかう映画があって、その理由がなんとなくわかってしまった。2023/03/30