内容説明
日本橋本石町にある弥三郎店の住人は事情をかかえた人たちばかりだ。気になる相手ができたと思えば出戻りだったり、旦那が勤め先から帰ってこなかったり、あげくの果てには店立ての噂が持ち上がる!
日本橋本石町に弥三郎店と呼ばれる長屋があった。事情を抱えた住人ばかりが住んでいて――。
心温まる江戸人情を描いた連作集。
「時の鐘」
真面目一徹、そろそろ嫁をと周囲から勧められる鉄五郎。そんな鉄五郎に気になる相手が現れたのだが、若くして出戻ったおやすという莨屋の女だった。
「みそはぎ」
おすぎは、老いた母親の面倒をみている。ある日、勤め先の井筒屋に見慣れぬ男が来るようになった。
「青物茹でて、お魚焼いて」
おときの旦那は錺職人。次第に泊まり込みの日数が長くなり、しまいにはひと月にもなった。
「嫁が君」
おやすはずっと旦那が家にいるおひさのことが羨ましい。ある日、この旦那が寄せ場からきた人物だと噂になる。
「葺屋町の旦那」
おすがのかつての奉公先の倅が、弥三郎店にやってきた。どうやらこの倅、わけありのようで。
「店立て騒動」
弥三郎店が店立てに?! 住人は緊急事態にてんやわんやの大騒ぎ。どうにかこの事態をとめられないか。長屋の住人が一致団結して行ったことは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
99
宇江佐さん、お得意の市井人情モノ。江戸は日本橋(通称)やさぐれ長屋に暮らす面々の波乱万丈物語。24歳一本気で人情にあつい大工・鉄五郎を柱に六話の連作短篇です。どの話も遜色なしに面白い。宇江佐作品にハズレないです。最終章の【店立て騒動】は、長屋解体にひと騒動。円満解決に感動のです。泣いて、笑って…そして感動して、宇江佐小説に酔いしれました。2020/04/14
ぶち
86
日本橋本石町にある裏店・弥三郎店には事情を抱えた人ばかりが住んでいます。堅物の大工・鉄五郎、気の強い出戻りのおやす、老母の面倒に悩むおすぎ、旦那が仕事場から帰ってこなくなったおとき… それぞれが事情を抱えて、助けたり、助けられたり。時には上手くいかなくて、裏店から出ていく羽目になったりもします。貧乏でお節介な人たちが不器用に生きる裏店に、長屋の取り壊しの話が舞い込んできます。この緊急事態にすったもんだする住人たちのてんやわんやぶりが面白いです。最後はハッピーエンドに終って、読んでいるこちらもホッとします。2025/07/24
ふじさん
80
本石町の通称やさぐれ長屋に住む、一癖もふた癖もある住人が今回は主人公。真面目で堅物の大工・鉄五郎、その妻の出戻りで気の強いおやす、老母の面倒に明け暮れ悩み一杯のおすぎ、一時旦那が浮気で家を帰ってこなくなった錺職人の妻のおとき等、貧乏でお節介な老若男女がいがみ合ったり、助け合ったりしながら不器用に生きる。そんな中で、長屋の取り壊しが決まり、右往左往する日々、思わぬ結末が待っていた。市井の人々の何気ない日常の出来事を温かい目線で描いた心温まる作品。特に、大工の鉄五郎と妻のおやすの存在が物語を盛り上げている。2026/03/26
kei302
49
人の情の表も裏もきっちり描く宇江佐さんの長屋もの。世の中は厳しいものです。甘々では生きてゆけない。やさぐれる..。おやす鉄五郎夫婦がメイン。おやすが長屋に馴染んで、控えめにお節介を焼くようになって徐々に変わっていくのが面白かった。最後の「店立て:たなだて」の騒動がよかった。2020/04/23
ぽろん
44
弥三郎長屋転じてやさぐれ長屋に暮らす町人たちが織りなす連作短編集。まさか、宇江佐さんの作品が又読めるとは、嬉しい限りでした。本当にここの住人は気の良い人ばかりで、中には勘違いの住人もいたりしても、上手く解決。心地よい物語に続編を期待したい所なのに叶わないのは、残念無念。面白かったです。2020/05/20
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