内容説明
誰かの夢の中に入り込めるとしたら?
毎晩、同じ世界の夢を見ることができるツキコ。一本の巨大樹を中心に、豊かな緑が広がるその広大な夢の世界には、ツキコ以外は誰もおらず、鯨や怪獣に似た不思議な生き物だけが静かにのんびりと動き回っている。現実世界――通っている高校でツキコは少し浮いた存在で、友人と呼べるのは幼馴染みのヒナタだけ。相手を和ませる性格のヒナタは皆に好かれているが、誰ともかかわろうとしない自分は孤立気味だ。そんなモヤモヤする現実に比べ、誰の目も気にせずのんびりと過ごせる夢の世界は、ツキコにとって癒しの場。心からリラックスできる空間なのだ。
ところがある晩、ツキコの大事な夢の世界に見知らぬ青年が入り込んでくる。ギョッとするツキコに青年は名乗りもせず、なぜか不機嫌そう。不遜な態度の彼を問い詰めたところ、彼は「裏世界」と呼ぶ他人の夢の世界を旅しているらしい。青年とともに「裏世界」を巡ることになったツキコは、ミステリアスな世界の謎を解き明かしていくが…?
『最後の医者は桜を見上げて君を想う』の著者が描く、感動と発見の青春ファンタジー!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うまる
39
心の状態を反映した繰り返し見る夢「裏世界」の話。現実でどこか生きづらさを感じている人と裏世界の謎のリンクが興味深く、それぞれの顛末が良くできていてとても面白かったです。視覚的な描写が巧いので、美しい世界も荒廃した世界も頭に映像が浮かび易く、主人公達と一緒に裏世界を旅しているような感じで楽しく読めました。主人公含め3人の裏世界が描かれていますが、もっと他の人の裏世界も見てみたいです。世界観もキャラも素敵なので、綺麗に終わっているけど続編でてほしいなぁ。2021/05/29
Junichi Yamaguchi
33
『価値は人によって違う』… 裏世界… 僕のは、どんな景色だろう⁈ 灰色じゃないといいなぁ… 読了後、プロローグに心が暖まる。。2020/04/12
はな
30
自分の心の中の世界はどうなっているのだろう。緑豊かだろうか、それとも海の中か、、、宇宙空間のようだったりしてと妄想が尽きない。裏世界と呼ぶ心の世界に自由に行き来できる主人公。自分らしさを裏世界に求めていたのかな。現実世界との折り合いをつけようとしていたのか、他人の裏世界は気にはなるけど、あとあと苦しくなりそうだなと感じます。自分の裏世界だけで楽しみたいなと思う。2020/04/01
けんさん
27
『夢の中へ、夢の中へ、行ってみたいと思いませんか?』 自分の夢の中に行ってみたいと思うことがある。この本は、そんな夢を叶えてくれるばかりでなく、他人の夢の中まで旅行できてしまうツキコの物語。現実の世界を暗示する裏世界の謎を追うファンタジー・ミステリー。2022/03/02
hide
23
我々が生み出す芸術の数々は裏世界を可視化する手段のひとつなのではないか。人間の深層に広がるもうひとつの世界。そんな世界を渡り歩く二人。考えれば恐ろしいはずの彼らの干渉を、なんだか爽やかにさらっと素敵なことのように描き切った物語。2021/03/05