ちくま新書<br> 日本人のためのイスラエル入門

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ちくま新書
日本人のためのイスラエル入門

  • 著者名:大隅洋【著】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2020/03発売)
  • 蝉しぐれそそぐ!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント25倍キャンペーン(~8/3)
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  • ISBN:9784480073037

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内容説明

近年、スタートアップ企業の急増等により世界から熱い視線を浴びるイスラエルは、建国後わずか七〇年で最先端技術大国の地位を確立した。古代から続くユダヤの伝統を大切にしながら、なぜ彼らはイノベーションを起こし続けられるのか? 高出生率、家族中心の伝統、常識を打破する反骨心、市民社会と軍隊の関係、徹底した安全保障意識と自存自衛の精神……。少子化や経済・社会の不安に喘ぐ日本の未来を考えるヒントとして、現役外交官がイスラエルを縦横無尽に語り尽くす!

目次

●はじめに●「わが世の春」
本書の構成●●序章 イスラエルに関心を持つべき五つの理由●1 岐路に立つ日本●革新のきっかけ●2 イスラエルに関心を持つべき五つの理由●①高い出生率と家庭中心の社会
②伝統を中心として回る社会
③「常識」を打破する精神
④市民社会と軍隊との関係
⑤徹底した安全保障意識と自存自衛の精神●第一章 イノベーションの起きる国──躍進の起源とそのわけ●1 イスラエルの現在●海に開かれた世俗の町テルアビブ
分水嶺の頂きに立つ宗教都市エルサレム
三宗教の聖地が折り重なる旧市街
乾いた風景と美味しい野菜
インフォーマルでフラットな社会
交通渋滞
物価は日本の二・五倍
パレスチナ人労働者からアジア人の出稼ぎ労働者へ●2 「人に歴史あり」●ゼロから作り上げた歴史
リロン一家の歴史
ビサン一家の歴史
様々なストーリー
集団的記憶の通奏低音●3 社会主義共同体からアメリカ型資本主義へ●防衛費が対GDP三五%!
一人当たりGDPで日本を超えた!●4 「スタートアップ・ネーション」●イスラエル企業の成功
世界的競争力を誇るサイバー防衛分野●第二章 イスラエルの強さの秘密●1 国防軍──イスラエルそのもの●イスラエル国防軍の四つの機能
①社会のるつぼとしての機能
②社会人教育施設としての機能
③職業訓練学校としての機能
④同窓会の機能
軍と市民社会●2 イスラエルをイスラエルたらしめる文化的特質●英国はなぜ資本主義で先鞭をつけられたのか?
起業家とイノベーションを支える四つの文化的特質
①高いリスクを許容し取っていく精神(ハイ・リスク・テーカー)
②階層のない社会(ノー・ヒエラルキー)
議論を尽くす文化
③失礼千万(イムポライト)
④短気(イムペイシャント)
「非順応」という態度の決定的重要性
「理論的な議論」を培った宗教的伝統
「二〇〇〇年の比較優位」の消失●第三章 イスラエルが抱えるリスクとは?●1 順境を享受する社会●この国は、しばらく「買い」●2 人口構成上のリスク●アラブ系の人口比率は増加しない
現代イスラエルの建国を認めなかったユダヤ教超正統派
超正統派の伸長勢力はイスラエルをどこに導くのか●3 中東的素性の顕現というリスク●ヨーロッパとも少し違うイスラエル
「法の支配」
司法積極主義の功罪●4 「平和」のリスク●「生存の危機」の時代は終わった
一方でまだ平和は近くなったとは言えない
イラン神政体制との戦い
ロシア、アメリカとの関係
最大の悪夢
ヨルダン川西岸地区及びガザ地区のどうしようもない状況
「平和」の二次的な価値
フラットな社会は歴史の蓄積に耐えられるか?●第四章 イスラエルとのビジネス協力──壁を突破するために●1 イスラエルの強み●「非順応」「議論」というユダヤ文化の伝統
注目が集まったイスラエルの技術
イスラエ●ルの技術開発レベルはどのくらい高いのか
シリコンバレーとは何が違うのか?●2 日本企業のイスラエル進出●日本企業にとってなぜイスラエルか?
日本企業進出の現状
研究開発の拠点の設置●3 成功への課題●シリコンバレーでの失敗
日本企業が抱える課題
「やってみなはれ」の精神
いくつかの成功例、興味深い例
日本企業とイスラエル企業の真の協業●第五章 高まるイスラエルの政治的存在感●1 中東の混迷●揺れ動くアイデンティティ
オスマン・トルコ帝国の崩壊とイスラミズムの勃興
民主主義とイラクの分裂●2 存在感を増すイスラエル●米国の中東からの退出
米国の福音派との戦術的パートナーシップ
イスラエルのアウトリーチ●3 アラブ・ボイコット●アラブ・ボイコットの形骸化
「BDS(ボイコット・投資撤退・制裁)運動」●第六章 日本の役割●1 日本と中東和平●評価されている日本のパレスチナ支援
日本の姿勢とパレスチナへの期待
イスラエル側の事情●2 イスラエルと米国及び中国との関係●難はあるものの底流は変わらない米・イスラエル関係
トランプ大統領とユダヤ系米国人
イスラエルに寄付するユダヤ人
米国の建国物語と重なるイスラエルの物語
中国の進出により問題となったインフラ投資
王岐山国家副主席の訪問
米国によるイスラエルへの懸念表明
技術強国イスラエルの選択●3 日本とイスラエルの二国間協力●政治・安全保障の新機軸
深堀りすべき科学技術協力
端緒がついたばかりの大学間交流
若者は嗅覚を研ぎ澄ます
最も有名な日本人、杉原千畝
武道とアニメで日本を知る
日本旅行の人気はうなぎのぼり●終章 イスラエルを通して振り返る日本●1 イスラエルからの視点●「ニホンジンは歴史と伝統へもう少し敬意を払ったらどうですか」
欧米とは違う日本を見る視線●2 調和と停滞●自然に帰依し調和する多神教の伝統が遺った日本文明
大陸から隔絶されたがゆえに続いた日本
日本は職人と達人の国
カール・マルクスとスタートアップ
停滞と硬直化から抜け出すのに苦しむ日本
混沌として見えるアメリカの歴史は断続的に変革、調和の日本の歴史は不連続に飛躍する
「生かされた自分たちの使命とは何か」●3 イスラエルは日本の変革の触媒となり得る●大きな変革のとき
イスラエルという変革のための触媒●あとがき●参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

molysk

61
サイバー防衛などの分野で、最先端の技術を誇るイスラエル。その強さの源泉は何か。筆者によると、「非順応」「議論」というユダヤの伝統に裏打ちされた「規格外の考え方」が、イノベーションを生み出すのだという。「非順応」は、多数派に従わないことで、独自の文化を守ってきたユダヤの歴史であり、「議論」は、神聖な文書を読み、理解して、若者に伝えることを義務とした、ユダヤの文化である。非合理とも捉えられがちな伝統が、国家の力の源泉となる。同じく長い伝統を持ちながら、停滞に喘ぐ日本にとって、気づきの契機となるのではないか。2022/07/17

Aster

61
【日本人のための】と銘打っているだけあって、イスラエルだけではなく日本のこともイスラエルと対比させて書いているのが良い。パレスチナ問題に関してはそこまで詳しく書いてはいない。イスラエルの人間性やビジネス関係について詳しく書いている。あと…イスラエルに行きたくなる…2020/03/21

trazom

49
スタートアップ国家としてのイスラエルの実態を知りたかったが、その意味では不満が残る。でも、その背景は理解できた気がする。軍役が、社会の中で見事なエコシステムを形成している。さらに、階層がなく失敗を許容する社会や、短気で、権威に食って掛かることを善とする国民性が起業化を後押ししている。「ホロコーストで、アメリカを含めどの国も何もしてくれなかった」ことを忘れない強い民族的アイデンティティーがこの国を支えているのだろう。その逞しさに敬服するとともに、こういう人とは友だちになれそうにないなあというのも正直な感想。2020/05/17

kan

30
イスラエルについて基本的な知識しか持ち合わせていなかったので、入門編としてとても勉強になった。皆兵制なのは単に国防とイノベーション人材育成のためだと思っていたが、背景がバラバラな若者を坩堝に放り込んでイスラエル人という共通意識を持たせる役割もあると知りなるほどと思った。迫害の歴史の恨みを胸に人工国家を運営し、国民統合を目指すにはさまざまな苦労がありそうだ。イスラエル人の特質フツパも面白い。スタートアップに適した国民性というのはやっぱりあるんだろうな。2023/11/17

Francis

17
意外とありそうでなかった現代イスラエルの入門書。外務省に勤務し、イスラエル公使も務めた方らしくうまくまとめてある。中東情勢についての分析は鋭い。日本では井筒俊彦氏以来の知的伝統故か、アラブ寄りの見方が中東情勢を語るときに多いが、最近のアラブのダメさ加減を見ると著者のイスラエルから見た見方の方が妥当であろう。ただ、現代のイスラエルがどうしてこのようになったのか、そのためにはユダヤ教のことを知る必要があるが、これについては十分とは言えない。市川裕「ユダヤ人とユダヤ教」との併読がお勧め。2022/05/07

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