内容説明
死のぎりぎりの瀬戸際で「生」に目覚めた子猫。その命の輝きをまのあたりにした「生きる歓び」。小説家・田中小実昌への想いを言葉を尽くして描いた「小実昌さんのこと」。瑞々しい感性で生と死の実感に寄り添う短篇二作を収録。〈解説〉伊藤比呂美
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちえ
43
片目が潰れ、そのままであれば死んでしまうだろう子猫を見つけてからの事を書いた表題作、小説家・田中小実昌への想いを書いた「小実昌さんのこと」の二編。読み終えて、これがエッセーなのか小説なのか(作者は小説だと言っている)、内容が分かるかどうか(特に二編目)なんてことはどうでもよくなる。作者の猫や田中小実昌さんへの想いが真っ直ぐに伝わってきて。とても良かった。2019/09/07
tomi
28
捨てられていた子猫は衰弱しきっていて片目も失明していた。懸命に看病しつつも半ば諦めかけていた小さな命の回復を見つめ、生命にとって生きることは歓びであり善なのだ、と実感する。弱っている心に効く清々しい作品。併録の「小実昌さんのこと」は田中小実昌の追悼小説。文章が多く引用されているが、保坂さんが田中小実昌の影響を多く受けているのがわかる。この2作は明快に小説だがフィクションは殆どないとのこと。理論はちと解らないが読むのに小説だのエッセイだのと、こだわる必要はないかもしれない。2014/06/09
きょちょ
21
表題作ほか1篇。 「生きる」と「生きている」を明快に区別し、「生きる歓び」の良さを伝える。 もちろん「生きている歓び」を実感できることも良いと思うけれど・・・。 作者は、「小説らしくない」という批判に対して、はっきり「これは小説だ」と言っている。 私にとってはどちらでも良いことだ。 読んでいて面白かったり、関心・感心出来たり、良い時間を過ごせたと思えれば良いのです。 物語性はないけれど、個人的には彼の名作の1つと思います。 ★★★★2016/08/22
Yuki Ban
8
毎日、半日猫の世話をするからその半日は仕事ができない。これって猫に対する十分な愛ですね。田中さんへの敬愛が伝わってくる。描写ではなくて、ただ、見たままを書いているのがお好きなんだな。著者の文章もなにも意図しないそのような書き方だもんな。2篇とも小説なんだ、と驚いたが、そういった意味では意図のあるエッセイと違い、著者が考える小説なんだなと思った。2025/04/27
ライム
7
道に出来てる人だかり、中には親からはぐれて弱っている子猫、木の上ではカラスが狙っている、誰かが行動してくれれば責任転嫁して立ち去れる、そんな状況で自分はどう行動するか?…私が読み取ったのは「生きる歓び」とは「善の歓び」、自分の事にかかりきりになっているようではその歓びは得られない、手間がかかるのは目に見えていても「もう、しょうがないな」と笑って、誰か(猫)のために手を尽くすことなのだ。もうひとつの短編で、まだ未読のコミさんの本も読んでみたいと思った。 2025/03/29
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