内容説明
日本がんセンター呼吸器内科の医師・夏目は、生命保険会社に勤務する森川から、不正受給の可能性があると指摘を受けた。夏目から余命半年の宣告を受けた肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金三千万円を受け取った後も生存しており、それどころか、その後に病巣が綺麗に消え去っているというのだ。同様の保険支払いが四例立て続けに起きている。不審に感じた夏目は、変わり者の友人で、同じくがんセンター勤務の羽島とともに、調査を始める。一方、がんを患った有力者たちから支持を受けていたのは、夏目の恩師・西條が理事長を務める湾岸医療センター病院だった。その病院は、がんの早期発見・治療を得意とし、もし再発した場合もがんを完全寛解に導くという病院。がんが完全に消失完治するのか? いったい、がん治療の世界で何が起こっているのだろうか――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
421
専門知識を駆使しながらも、どシロウトの我らにも噛み砕くように理解させ、どうなる、どうなる?!と一気にラストまで読ませる手腕はお見事。ただ、登場人物たちが酒を酌み交わしながらダラダラと事件を解決していくサマに、魅力を感じない。どシロウトのわたしには、こんなトリック(と呼べるのか)が果たして可能なのか、という疑問が最後まで残ってしまう。最大の難点は「ホワイダニット」、、、。わたしには納得できない。デビュー作とのことなので、2作目以降に期待というところ。2018/06/21
starbro
412
がんサバイバー(寛解済)の私は、新作の『がん消滅の罠 暗殺腫瘍』を読む前に、未読の本作を読みました。「このミステリーがすごい!」大賞受賞作だけあって、ミステリとしては面白いですが、元々専門家だけあって、特に前半は堅苦しい感じがしました。続いて、『がん消滅の罠 暗殺腫瘍』へ。著者がどれだけ進化しているか楽しみです。 https://youtu.be/AYPNfnvw0dI 2021/08/29
bunmei
250
ドラマ化された話題の一冊。最近、医師として医療現場に携わりながら医療ミステリー小説を手がける二刀流の作家も多く、岩木氏も国立癌研究センターで従事していたそうですね。そのため医学的知見が豊富で、癌の治療方法や病院の裏膜等も、リアルに描かれています。内容的には、どちらが正義なのかは難しい部分もありますが、こうした行為が現代医療の中では実現可能な怖さも感じました。「医師にはできず、医師でなければできず、どんな医師にも成し遂げられなかったこと」という研究は、ノーベル賞と犯罪の紙一重の差にあるのかもしれません。 2018/04/10
Yunemo
246
がんなんてまさか自身に降りかかってこないもの。こうした認識の間違いに改めて気付かされます。がんそのもの、罹患した患者の気持ち、リアリティがあり過ぎて身近なものに。本作を受け入れてしまうのはこの現実味から。ただ残念なのは、ここに至る動機がどうにも納得出来ずに、というよりちょっと理解し難くて。医師にはできず、医師でなければできず、どんな医師にも成し遂げられなかったこと。実は、正義の義から、こんな行動に出たというなら、何となくわかるところもあって。でも、がん治療とトリックのこの組合せ、着想には正直のめり込んで。2018/03/11
れみ
175
余命宣告を受けたがん患者の病巣が消え去るという事例と保険金支払いとの関連について調べ始めた、呼吸器内科医の夏目と仲間たち。その先にあった驚くべき真実とは…というお話。早期発見ならば完治する可能性が高いとはいえがんになるということは、大変なことだと想像がつく。そういう気持ちを弄ぶようにして無理なことを通そうために利用したり、あの人たちのやっていることは許すことはできない。あの人の私怨にまつわる部分も 、そこまでします!?って感じ。でも、モヤっと、まだ全然終わってない感じ、好きだなあ。2018/05/22