内容説明
台湾で、その命日が「正義と勇気の日」に制定された日本人がいた――。日本と台湾の絆を表す「英雄」が歩んだ苦難と感動の物語。史上初の「日台」同時発売ノンフィクション!
1895年、ひとりの若者が台湾を目指して故郷・熊本をあとにした。台湾の治安維持と発展に尽くすためである。やがて台湾女性と家庭を築いた彼は、のちに「英雄」と呼ばれる男の子をもうけた。しかし、戦後の台湾の悲劇は、一家を動乱に巻き込んでいく。日本と台湾の“絆”を表わす「5代120年」にわたる壮大な一族の物語――。
「私には大和魂の血が流れている」「台湾人、万歳!」。台湾最大の悲劇となった1947年の「二二八事件」で、そう叫んで、永遠の眠りについた英雄がいた。坂井徳章弁護士(台湾名・湯徳章)である。父親は日本人、母親は台湾人で、生まれながらにして日本と台湾の“絆”を表わす人物である。父を早くに亡くした徳章は、貧困の中、辛酸を舐めながら勉学に励み、ついに当時の最難関国家試験である高等文官司法科と行政科の試験に両方合格する。
帝都・東京から故郷・台南へ帰り、台湾人の人権確立のために活動する中、徳章は国民党政府の「二二八事件」弾圧から台南市民を救うために奔走する。自らの身を犠牲にしながら、多くの市民を助けた徳章は、50年後に忽然と“復活”する。苦難の道を歩んだ台湾と、なぜ今も台湾人が日本と日本人をこれほど愛してくれているのか、その根源を解き明かした感動の歴史ノンフィクション――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミナ
14
東日本大震災の時もコロナが猛威を振るう今も、台湾は日本を気にかけ、手を差し伸べてくれている。所謂“親日国”のことを日本人は知らなさすぎるし、学ぶ機会も与えられていないことを不思議に思う。台湾も日本に支配された日々が決して台湾人にとって良い日々でなかったことは、日本の敗戦により独立できると考えたことからも明らかだろう。実際に内地人と本島人との間に差別があったことも記されている。2020/04/21
ハルキゲニア
6
親日国として知られている台湾。東日本大震災のときの義援金はアメリカに次ぐ2位。なぜ、台湾の人達がこんなに日本を好いてくれるのか知りたくて読みました。日本と台湾の間にも争いがあり、支配があり、反乱があったんだなぁと改めて知ることができました。そんな状況のなかでも、台湾のために力を尽くした日本人がいて、台湾の人達の心に残っているんでしょうか。それよりも、日本のあとにやってきた中国の支配があまりに過酷で、日本のほうが良かったって思いがどんどん膨らんだっていうのが大きいように思います。台湾、行ってみたいなー。2021/03/05
Miyako Hongo
4
日本と台湾の間に生まれた台湾の英雄・湯徳章の物語□戦争が進むにつれて日本軍の質は落ちていったと思うのだが、初期に占領された台湾は割とマトモに機能していたようだ。あくまで後から来た中国軍の野放図さに比較して、という意味でなので禍根は残ってると思う□二つの国の間で上手く立ち回った者の方が多かったと思う。その中であえて台湾人として、日本人の父親から受け継いだ者に殉じたって辺りが美談。なんかねえ、この辺りの英雄譚って話盛ってないかって思えるくらいご立派感あるんだよねえ。いかにも日本のジジイ層が喜びそうな仕立てで。2025/05/04
ふじたん
4
二二八事件後の国民党政権による台湾知識階層への弾圧の中で「正義と勇気」を示し、多くの台湾人を救うために犠牲となった湯徳章(坂井徳章)さんを描いたノンフィクション。湯さんらが味わって来られた苦難の歴史と比べれば、私自身が日ごろ味わっている怒り、苦痛、葛藤などはほんの些細なものと感じられる。故郷熊本にルーツを持つ湯さんという英雄のことを多くの人に知ってもらいたい。2020/08/22
とらちゃん
3
読後の深い感動と切なさが収まらない。知らなかった。こんなに人として美しく志の高い人がいたことを。こんなに理不尽な死があったことを。そして第二次大戦の前後、台湾にこんな歴史があったことも。日本人の父と台湾人の母を持ち、日本人としての「大和魂」を胸に、台湾人として台湾の発展のために身命を賭して貫かれた湯徳章さんの「正義と勇気」。これから蔡英文総統のもとで、威圧的な行動を強める巨大な隣国を国際社会で牽制しながら、「自由」と「民主」を守り抜き、志半ばで非業の死に至った湯さんへの何よりの供養とすることを切に願いたい2021/05/06