内容説明
僕がひきこもりになって十年が過ぎた。影山俊治は、中学時代のあるつまずきが原因で自室から一歩も出られなくなり、ゆるやかな絶望の日々を送っていた。「おはようございます。影山俊治さん」そんなある日「ひきこもりを家から出す」プロ集団から、敏腕メイドが俊治の元に派遣されてきて……!? 切なくも優しい家族「再生」の物語。2019年ノベル大賞・大賞受賞作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
231
タイトル通りだっただよ。中レベルの一例だからね。フィクションだからね。誰でもマニュアル通りに行く訳ない事も念頭に、でも事例の一つとして知っておいて損はないかと思いました。引き篭もりの悩みや葛藤、心理を知らずにおりました。負のスパイラルに陥って仕舞う事は、予想に難くないですけど。猫田さんは、引き篭もり側も、家族の側もしっかり心理描写されている様に思えますが、当事者だったりするのでしょうか?参考文献もしっかり、好感です。2022/07/27
佐島楓
84
この作品において大事なのは、ひきこもる人がどんなことにおびえ傷つき苦しんでいるのか追体験できることと、苦しんでいるのは自分だけではないという気づきをもたらしてくれること。その2点が理解できるだけでも、この小説が世に出た意味がある。2020/02/17
よっち
39
中学時代のつまずきが原因で自室から一歩も出られなくなり、ゆるやかな絶望の日々を送っていた影山俊治。十年が過ぎたある日、「ひきこもりを家から出す」プロ集団から、敏腕メイド・エリーが派遣されてくる切なくも優しい再生の物語。両親と協力しながら地道に俊治へアプローチを図るクリス。乗り越えるのは簡単なことではなかったでしょうけど、何度か挫折しかけながらも周囲の支えられながら、過去に決着をつけて前に進もうとする俊治の頑張り、そして乗り越えるきっかけを得た彼がまた周囲の人たちを支えてゆく結末は心に響くものがありました。2020/02/10
ゆなほし
34
中学時代から10年ひきこもっている俊治のもとに、ある日突然“ひきこもりを家から出す”プロ集団の敏腕メイドが派遣されてきて…。唯一の牙城である自室に、突然のメイド美少女。現実味の無い設定でありながら、扱う内容はひきこもりの更正というとことん現実的なもの。このギャップが、出口の見えないひきこもりの苦難の日々を綴る物語に緩衝材のように働き、重苦しいだけの物語に感じさせない。社会に出られるかひきこもるかなんて、ほんの些細なきっかけでどちらにも転ずる可能性がある。世の中に対する見方を変えてくれる、救済の物語だった。2021/01/10
おかだ
33
タイトルや装丁から、面白おかしい内容かもしくは実用書か…と想像してたけど、意外と真っ当にひきこもりと向き合った小説だった。15歳から10年、25歳のひきこもり青年が自分自身と対峙し葛藤する、そして己の足で立ち上がり歩き出す物語。キッカケを作るのが美少女メイドという突飛な要素はあるものの、彼女から出てくる言葉や寄り添う姿勢は色々な気付きを与えてくれる。ひきこもる人にはもちろん、柔らかく潰れやすい心を持った思春期の息子娘への対応としても役立ちそうなメソッドがいっぱいで参考になる。興味深く読んだ。2023/03/31