新しい地政学

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新しい地政学

  • ISBN:9784492444566

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内容説明

民主主義や法の支配が失われ、リベラルな国際秩序が失われつつある世界はどこに向かうのか? 
日本を代表する知性を結集し、再び動き始めた「地理」と「歴史」で世界を理解する視座を提示。
「ポスト・マッキンダー」時代の地政学を示す。

トランプ米大統領が進める「アメリカ・ファースト」の政策や、中国の急速な軍備増強、ブレグジットなどによって、世界政治の不透明性が増している。
そもそも冷戦後の世界は、リベラルな国際秩序が発展し、また民主主義や法の支配、人権というような普遍主義的な価値が世界に拡大してくことが想定されていた。しかしそのような楽観的な国際秩序観はいまや後退し、世界のそれぞれの地域で、力がものをいう地政学が回帰している。
地政学の視座は、戦後長い期間、日本では忘れられていた。他方で、グローバル化が進み、相互依存が進展した現在における地政学は、一世紀前にイギリスの地理学者マッキンダーが想定していたものとは似て非なるものである。
本書では、それを「新しい地政学」と称して、そのような「新しい地政学」の誕生と、それにともなう国際秩序の変化を、当代気鋭の研究者たちが様々な角度から明らかにしていく。

目次

序 章 古い地政学と新しい地政学(北岡伸一)
<第Ⅰ部 理論的に考える>
第1章 新しい地政学の時代へ――冷戦後における国際秩序の転換(細谷雄一)
第2章 武器としての経済力とその限界――経済と地政学(田所昌幸)
第3章 国際紛争の全体図と性格――紛争解決と地政学(篠田英朗)
<第Ⅱ部 規範・制度で考える>
第4章 人権の普遍性とその濫用の危険性――人権概念の発展と地政学(熊谷奈緒子)
第5章 国際協力という可能性――グローバル・ガバナンスと地政学(詫摩佳代)
<第Ⅲ部 地域で考える>
第6章 プーチンのグランド・ストラテジーと「狭間の政治学」――ロシアと地政学(廣瀬陽子)
第7章 「アフリカの角」と地政学(遠藤 貢)
第8章 「非国家主体」の台頭と「地域大国」――中東と地政学(池内 恵)
終  章 中曽根康弘の地政学――1950年の世界一周旅行(北岡 伸一)
あとがき
新しい地政学における国際秩序を考える研究会
編者・執筆者紹介と執筆担当章

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ひろき@巨人の肩

97
2015年より三年間、日本の知性が結集し研究した成果をまとめた本書。9人の専門家が9分野より世界情勢を語る新しい地政学の教科書。世界は、権威主義的大陸国家である中ロと、リベラルな海洋国家である西側諸国連合により二分された。一帯一路とインド太平洋構想、ユーラシア連合とNATOの対立。朝鮮半島から東南・南アジア、中東、アフリカの角、サヘル、東欧とリムランドでは紛争が勃発。安全保障戦略は、陸海空に宇宙、サイバーを加えた5次元空間を対象に、軍事、経済、人権、保健と全ての外交カードが地政学的緊張関係に影響を及ぼす。2022/10/08

川越読書旅団

30
地政学的見地から分析するプーチンの「グランドストラテジー」、「アフリカの角」地域、そして中国の「一帯一路政策」と中東の現状。これまでの浅薄な理解から、通暁への第一歩を踏み出せたのではないかと。紛争多発ベルトの地政学的理解は、非常に論理的で納得のゆく実情解説になっており良い。2020/10/12

coolflat

18
2010年代の世界の武力紛争の震源地とも言える中東地域では、シリア・イラクという中核的地域において、激しい武力紛争が起こっている。このユーフラテス川流域のメソポタミア文明の地、地中海とペルシア湾に挟まれた平野部こそが、2010年代の世界の武力紛争の最大激戦地である。この地域は、さらに黒海やカスピ海のあるコーカサスの動向、さらには紅海周辺の情勢とも連動性が高い。従って中東の中核地域における武力紛争の影響は、容易にアフリカへ、そして南アジアへと波及していく。あるいは欧州やコーカサスを通じてロシアにも影響が及ぶ2024/01/27

井上裕紀男

14
リムランドなる見方ならユーラシア大陸、ひいては日本は極東と呼ばれるも影響力が大きい。見方が変われば見える世界が違ってくるのだから、地政学が再注目されていることが本書で分かります。 紛争とドゥーギン地政学の章立ても良いですが、個人的に詫摩佳代氏の国際保健に関する章が面白い。病は人の歴史を幾度も狂わしているだけに、各国が外交戦略に組み込んでいるし、トランプ元大統領がやみくもに国際機関と揉めている訳ではないことも見えてくる。興味深い。 第7章の「アフリカの角」、巻末の中曾根元首相論考も示唆あり。2023/12/31

アメヲトコ

7
20年刊。冷戦終結時には過去のもののように思われていた地政学が再び新しいかたちでその重要性が見直されつつある現在、複雑な国際関係を地理と歴史の視点から読み直そうとする一冊。保健をめぐる国際関係を扱った第5章託摩論文はコロナ前に書かれたものですが、感染症対策における国益と人類全体の利益とのせめぎあいは大変興味深い論点です。終章の中曽根論はやや著者(北岡氏)の思い入れが強い章ですが、中曽根氏のパーソナリティは面白く、これを膨らませた評伝を一冊書いて欲しいところ。2021/11/03

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