内容説明
1845年3月、クーパー船長率いる米国捕鯨船は日本海を目指す途中、無人島に漂着していた日本人11名、翌日にも沈没しかかった日本船の乗組員11名、計22名を救助した。22名分の水と食料の消費は激しく、送りとどけるにも日本は鎖国中で、沿岸部に近づけば被弾する恐れもある。船長の決断は早かった……。ペリー浦賀来航の8年前にあった日米交流の史実を題材に、船乗りたちの交誼を描く圧倒的感動巨編。(解説・縄田一男)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya Murakami
77
新潮文庫の歴史時代小説フェア2019 江戸時代の日本人が海で漂流して外国の船に助けられて…、という話はジョン万次郎だけでなかったのですね。八丈島の噴火が史実通りの描写なのか…?その辺調べてみたくなりました。後は魚料理のおいしそうなこと。2020/05/02
あすなろ
49
ペリー来航前に、ジャパンの鎖国政策に対した22人の日本人遭難者を載せたアメリカの捕鯨船。ジャパンに寄港し遭難者を降ろし、分け与えた食料・水も補給したいが…。見えて来た港はカズサビーチ。ガリバー旅行記を彷彿とさせる曳航と夜取り囲む無数の篝火。題材で選んだ久しぶりの山本一力氏作品だったが一気読みの作品であった。数多くの、そして山本氏の主流ではない⁈と捉えられそうな作品ではあるが、一読の価値はあると思うこれは時代小説でなく歴史小説。2019/10/14
shi-
17
ジョンマンは未読だけど、ぜひ読んでみたいと思った。 自分たちの食糧が減ることもいとわないのに、迷わず助けた船長。そして、食糧が減っていくなでもなんとかしようとしたコンサー。助けられた方も、なんとか恩に報いようとする日本人達。言葉は通じない中、お互いを認め合う。 清々しい気持ちになれる。2019/11/15
Y.yamabuki
14
船長のクーパーは船乗りの矜持として、余分に食料が必要になり、鎖国中の日本から攻撃を受ける心配もある中漁民を助け日本に送り届けようとする。他の船員達も言葉が通じず、見掛けも違う相手に手を差し伸べる。船乗り同士通じ合うものがあるのだろう。和気藹々の船上風景だ。一方日本の役人も自国民を助けて貰った恩義に報いようと、鎖国の中出来る限りのことをする。ちょっと出来過ぎだけれど、世界中の人達が皆こんな風だったならと思わずにはいられない気持ちのよい話。ただ当時油を得るためにだけ、鯨を獲っていたのには、胸がちくりとする。2020/01/22
しばこ
12
ペリー来航前の実話に基づいた話、ということでけど、アンビリーバボーとかで取り上げられているのを読んでいるような面白さがあった。国は違っても、海の、船の男という同士たちの通じ合いが、冒頭で結果は分かっていても、冒険小説的なハラハラドキドキ感とともにページをめくらせた。読後は爽やかであった。2019/10/03