内容説明
〈土偶坊(デクノボー) ワレワレ カウイフ モノニナリタイ〉――殆どの作品を「未完」の状態で残した宮沢賢治。その手稿が示す揺らぎと可能性を丹念に追うことで、賢治世界=イーハトーブのまったく新しい姿が見えてきた。石、宇宙、火山、動物、風等に込められた創造原理を解き明かし、いまを生きる私たちの倫理を問う、画期的批評。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Koichiro Minematsu
50
好んで読む宮沢賢治ですが、本著であらためて全集を読んでみたくなりました。本著は「宮沢賢治、心象スケッチ研究書」と思います。ソローが、ダーウィンが、ルイス・キャロルが、つながっていく。そして、ファンタジー(幻想=幽霊)の行き先につどりつくには、銀河鉄道に乗るしかありません。文化人類学者の筆者だからこその力書だと感じます。2020/02/11
❁Lei❁
19
現代の諸問題と絡めて語られる新鮮な賢治論。エコロジーや植民地主義など、ちょうど興味のあるところを学べて面白かったです。特に「太平洋」が平和への希望を持つものであり、ゆえに「銀河鉄道の夜」の天空世界がパシフィックに浮かんでいる、という説が素敵でした。また全体を通して類似した海外文学を参照し、世界規模の考察がなされており、著者の叡知にも脱帽の一冊です。2022/10/16
ポカホンタス
7
賢治の作品を縦横に引用しながら、海について、動物について、風について、石について、デクノボーについて論じられる。ベンヤミン、アガンペン、オクタビオ・パス、などが参照され、文化人類学的な視座から、賢治を世界の中の賢治としてトランスカルチュアルに読み解いていく手際が鮮やかでいろいろと刺激をいただいた。先日開催された宮沢賢治学会主催の冬季セミナーでの講演も聞けたのでよかった。2019/12/22
まおまお
6
初めて宮沢賢治の批評本を読んで、分かっていなかったことを知ることが出来て良かった。今福氏の解釈法によるところもあるのかもしれないけど、時が進むにつれ置き去りにされて来たであろう人間のなかのコスモスのつかみ方が示唆されていたように思うし、それによって気持ちが潤った。オクタビオ・パスの詩人が詩を書く時の目の開け方の紹介のくだりも素晴らしかった。読めてよかった。2019/12/09
Sherlock Holmis
5
生涯岩手の地に根差しつつ、該博な知識と感性で独自の文学世界を打ち立てた宮沢賢治という人物の底知れなさ、物凄さに今更ながら驚嘆したが、本書の眼目はそこに無い。想像力さえあればどこへでも飛んでいける(読めば分かるが本当にどこへでも)、ということに気付かされ、今自分が見ている世界の枠組みそのものを考えさせられる豊かな読書になった。二〇二〇年五月のタイミングで読めたことは幸運だった。2020/05/16




