新潮文庫<br> 巡礼(新潮文庫)

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新潮文庫
巡礼(新潮文庫)

  • 著者名:橋本治【著】
  • 価格 ¥539(本体¥490)
  • 新潮社(2020/01発売)
  • ポイント 4pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101054179

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内容説明

男はなぜ、ゴミ屋敷の主になり果てたのか? いまはひとりゴミ屋敷に暮らし、周囲の住人達の非難の視線に晒される男・下山忠市。戦時中に少年時代を過ごし、昭和期日本をただまっとうに生きてきたはずの忠市は、どうして、家族も道も、見失ったのか――。誰もが顔を背けるような現在のありさまと、そこにいたるまでの遍歴を、鎮魂の光のなかに描きだす。橋本治、初の純文学長篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

はたっぴ

82
主人公はゴミ屋敷に住む忠市という老人。戦争中に少年時代を過ごし、戦後まもなく荒物屋の住み込み店員になり、やがて父親から家業の荒物屋を継ぐ。作中で戦後の貧しい日本が豊かになっていく、その変遷と人々の暮らしぶりが細やかに描かれており、目を見張るものがある。そんな時代に生真面目に生きてきた忠市の家が、一体なぜ、どのようにしてゴミ屋敷に成り果てたのか?古いものを捨て、新しいものを受け入れる、その循環が崩れていく過程が痛ましく悲しみを誘う。物語終盤、弟とのお遍路さんで、忠市が初めて見せた笑顔に救われた気がする。2016/03/22

F

33
終戦後、豊かさを追い求め変わっていく日本の中で、ただ愚直に生きてきたはずの男は何故ゴミ屋敷の主に成り果てたのか?……不器用に生きた男の魂が、その長い彷徨の末に辿り着いた答えとは?――。なんとも言えない重みがある作品だった。ゴミ屋敷の主、それを見つめる周辺の愚かしく醜い姿の中に、自分自身の姿を見た。巡るあてもない場所を巡り歩いているのは、昭和を生きた主人公だけではなく、今を生きる自分も変わらない。それ故にこの結末は救いであり、また恐ろしさも感じる。今を如何に、そして誰と生きるのか…人生を考える一冊だ。傑作。2012/02/13

かえる

29
読メコミュ内で読友さん推薦。「ゴミ屋敷」主人の話。自分が積み集めた物からは異臭が放ち、近所からクレームが来ても「ゴミじゃない」と異論する。戦後、日本の急激な変化の暮らしぶりに呑まれていく不器用な男の人生がそこにあって、昔は物を手に入れることの苦労を味わっているから思い入れもあり、そう簡単には捨てられないのだろう。テレビではよく見かける光景だけど、なぜこうなってしまったのか作品を読んで少しだけ解るような気もしたが、ゴミ屋敷はただの傍迷惑でしかない。今は断捨離やミニマリストが人気だから、持たない暮らしもいい。2016/07/07

ろくでなし@ぐーたら中

23
62点 ゴミ屋敷。傍迷惑な話だ。しかし結果には過程があり原因がある。どこからその道を歩み、なぜゴミを集めそこに住まうのか。現在を拠に行きつ戻りつする時系列。語られる忠市の過去と彼を見つめる様々な視点描写が興味深く、日本が急激に変わろうとしていた時代を生きた人々の心の動きがリアル。人は誰もが幸せにその人生を全うできるものではない。こういう人間が確かに存在し得る事もまた真理で、行く道を間違えたなら有り得ないとも言い切れない怖さがある。多分誰もが感情移入し辛い話。でも、誰もが何となく解る読後感に包まれるはずだ。2014/05/05

はちてん

20
ゴミ屋敷の主になってしまった男の過去とは?という話。時代背景もわかるし、誰にでも起こり得る生活の失敗とか、それそれの落差も「あるだろうな」と思う。そうは思うけれど必然性は無い。ラストもあそこが落ちどころかな。橋本治氏が書く、大きい意味での時間の移ろいは読んでいて心地いい。読後感は少し物足りない。2012/04/15

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