内容説明
《人は普段、いつもの平穏な日常が続くことを疑わない。だから思いも寄らない病や命の危険に突然直面すると、未来への不安、死への恐怖が避けようもなく広がる。そこで人の生、そして死は、どう見えてくるだろう。その問いに正面から向き合った文化人らの作品を読み解きながら、生きるための希望を探りたい。》本文より
特別寄稿 窪島誠一郎 解説 黒川創
【登場する主な書物】
正岡子規『病牀六尺』、中江兆民『一年有半』、高見順『死の淵より』、原民喜『夏の花』、保阪正康『「特攻」と日本人』、島尾敏雄・吉田満『特攻体験と戦後』、石牟礼道子『苦海浄土』、鶴見和子『遺言』、真木悠介『時間の比較社会学』、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』、柳田国男『遠野物語』、奥野修司『魂でいいから、そばにいて』、若松英輔『魂にふれる』、石内都『ひろしま』、フランクル『夜と霧』、目取真俊『水滴』、大城立裕『カクテル・パーティー』、大田昌秀『沖縄 鉄血勤皇隊』、岡本太郎『沖縄文化論』、吉村昭『関東大震災』、津村節子『紅梅』、西部邁『西部邁 自死について』、北条民雄『いのちの初夜』、ソンタグ『隠喩としての病い』、小田実『「難死」の思想』、小林秀雄『ドストエフスキイの生活』ほか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
19
共同通信の記者が、余命宣告された後に読んだ本をもとにして書いた「生きることばへ いのちの文化帖」と題する30回の原稿。無言館の戦没画学生の絵から始まり、広島、水俣、東日本大震災、沖縄など、死者を見つめる透き通った文章が続く。一方、後半に掲載されている最後の2年間の日記には、「神さま、たのむから、まだもう少し時間くれよ」という赤裸々な叫びが…。私は、最近、二人の親友を癌で亡くしているだけに、彼らもこんな思いで最後の日々を過ごしていたのかと思えて、涙が止まらない。巻末の黒川創さんの追悼文も、心に沁みる。2019/10/02
チェアー
16
前半だけ読むと、さらりと読めてしまう。だが、後半の闘病日誌を読むと、前半の文章がどれだけの痛みと苦しみ、そして迫りくる死を見据えながら描かれたものかということがわかり、胸が詰まる。死が見えてきたとき、本に記された文字はどう見えるのだろう。痛みのなかでこれまで読んできた文字たちは、頭のなかでどう反芻されるのだろう。2019/11/11
Yuko
5
著者が癌で余命を宣告されてから取り組んだ30編の書評。後半に付された日記から、執筆期間、強烈な痛みと抗がん剤の副作用に耐えながら、命を絞り出すように書いていた事実を知る。書評は、自らの死への恐怖や葛藤を抑え、原爆、沖縄、水俣、東日本大震災などの個人的な死の背景にある、戦争や災害、圧政といった時代と社会への冷静な視点が貫かれている。読むこと・書くこと・生きることが一体だった著者の人生。「いのちは天に祝福されている」と書き「人がただ『生きる』ということそれ自体の尊さを感じ続けたいと思う」と結んでいる。 2019/11/13
あだっち55
2
才能があって、やりたいことがまだ沢山あるのに、若くして死を宣告された人を見るのは辛い。でも、金子直史は「父さんは、物を書き続けることで、たとえ死んでしまっても、それを読む人の中で生き続けるんだよ」と、娘に語ったとおり、生き続けることができる。2019/10/23
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