内容説明
品川の貨物倉庫で働く亮介は25歳の誕生日、出会いサイトでOLの〈涼子〉と知り合った。どんな愛にも終わりは来るとうそぶく亮介と、愛の力を疑いながら、でもどこかで信じたい〈涼子〉。嘘と不安を隠し、身体を重ねるふたりは、やがて押し寄せる淋しさと愛おしさに戸惑う……。東京湾に向きあった、品川埠頭とお台場に展開する愛の名作に、その後を描く短編「東京湾景・立夏」を増補した新装新版。(解説・朝井リョウ・陣野俊史)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
69
以前読んだ時より、客観的に読め、かつ物語の構造に目を向けられるようになった気がする。人間関係の対比を巧く使っているし、エモーショナルなせりふや行動を効果的に混ぜ込んでいる。愛情を信じたいのに信じられない、けれど信じたい、そういう心理が人間ではないだろうか。2019/09/06
おさむ
41
新潮社の「波」で紹介されていたので購入。舞台は1996年頃の東京湾岸。それを2003年ごろに書いた作品が15年以上経ったいま、新装文庫化。ボーイ・ミーツ・ガールではあるが、吉田修一らしく、男女の感情微妙な機微をうまく描く。電話→ガラケー→スマホと、通信手段がこの四半世紀で大きく変わり、人と人のコミュニケーションのありようが変わった事を実感します。ガラケーもスマホもなかった時代の恋愛ってたしかにこんな感じだったなぁと。きっと読む時代によって感想も変わるんだろうな。おじさん世代にとっては懐かしい小説でした。2019/09/04
おいしゃん
37
エリートOLと港湾労働者が、お台場と天王洲という、それぞれの職場を舞台に繰り広げる恋愛模様…まさに映画のようなストーリーだった。りんかい線が出来たばかりという設定から、だいぶ昔と思いきや、終章では一気に最近になり混乱したが、再文庫化で付け足したとのこと。付け足す前のラストも、付け足してからも、どちらも味があった。2021/06/21
piro
37
従来の文庫版に『東京湾景・立夏』を増補した新版。東京湾を挟んで向かい合うお台場と品川の貨物埠頭。直線距離で1kmに満たない対照的な風景の中で紡がれる不器用な二人の恋愛ストーリーは、もどかしいながらも、少しずつ溢れる思いに素直になっていく様が良かった。どことなく取り繕ったお台場の街の様な関係から、りんかい線で海を超えたかの様。あの辺の土地の姿を知っていると、この小説の空気を感じられると思います。2021/01/10
Syo
37
凄い。 なんか、学生時代に やり残したことが いっぱいあるような気が。 恐るべし吉田修一。2019/10/29