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内容説明
国宝・島津家文書の中の「江戸大地震之図」。ほぼ同じ絵巻がアイルランドのチェスター・ビーティー図書館にあり、近衛家に旧蔵されていたという。2本の絵巻はなぜ作られたのか。地震による混乱と復興はどう描かれているのか。薩摩藩邸とそこにいた篤姫を描く意図は何か。画像を解析し、文献史料をあわせて読むと、地震にとどまらない事実が浮き彫りになっていく。安政江戸地震を通して幕末の政治と江戸の社会を語る絵画史料に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きみたけ
30
著者は東大地震火山史料連携研究機構准教授の杉森玲子氏。島津家文書の中の絵巻「江戸大地震之図」では、地震による混乱と復興はどう描かれているのか。薩摩藩邸とそこにいた篤姫を描く意図は何か。画像を解析し文献史料をあわせて読むと、地震にとどまらない事実が浮き彫りになってきます。安政江戸地震を通して幕末の政治と江戸の社会を語る絵画史料に迫ります。 絵巻から読み取る整合性のある全体の総合的な解釈はもちろん、巻頭のカラー口絵や随所に挿し絵を配していて、視覚的効果・アピールがとても大きいと感じました。2021/06/18
hal
12
島津斉彬は、篤姫を家定と結婚させるために近衛家に養女にするのだが、その結婚話が大地震によって遅れてしまう理由を近衛家に説明するために作成したと思われる、安政の大地震の顛末の二巻の絵巻を、近衛版を参考にしつつ、島津版を徹底的に研究している。絵巻の見方、当時の史料の検討の仕方。とても勉強になりました。島津版の絵巻は、東京大学史料編纂所に所蔵されていて、PCで画像をじっくり見る事ができます。岡本綺堂の『半七捕物帳』は、風俗考証の資料としても高く評価されてるとか、一度読んでみようかと思いました。2020/03/21
bapaksejahtera
11
1855年旧暦十月の安政大地震に関し薩摩藩が残した絵図に係る力作。本絵図は篤姫の輿入れが、ペリー来航その他の取込みに加えて大地震遅れていた事を背景に、篤姫を一旦養女として受け入れた近衛家に対して、薩摩側が事情説明を兼ねて礼物として贈った物という。絵巻は、江戸の震災前と直後からその後の救恤や復興の様子を描く。描かれた対象の特定、行政の動き等周辺情報に加え、愈々絵巻作成の由来を説く。限られた紙幅から、上記企図は中々に尽くされる物ではないが、一応纏まった形となっている。著者や編集者の力量は高く評価されるべきだ。2024/03/09
アメヲトコ
10
安政2年(1855)10月2日の安政江戸地震を描き、島津家と近衛家に伝来した「江戸大地震之図」を絵画史料として分析した一冊。どこの何を描き、誰がどんな目的で作成したのか。大河ドラマの主人公になったあの人物も絡んできたりします。大日本古記録や大日本近世史料などの文献史料を駆使しながらの綿密な考証は史料編纂所の面目躍如。2020/03/14
onepei
4
絵画史料を読んだ成果2020/04/01