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内容説明
立花隆を要約するのは非常に困難である。まさに万夫不当にして前人未踏の仕事の山だからだ。時の最高権力者を退陣に追い込んだ74年の「田中角栄研究ーその金脈と人脈」は氏の業績の筆頭として常に語られるが、ほぼ同時進行していた『日本共産党の研究』で左翼陣営に与えた激震はそれ以上のものがある。
『宇宙からの帰還』にはじまるサイエンスものでは、『サル学の現在』でサルと人間に細かく分け入り、『精神と物質 分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか』でノーベル賞科学者の利根川進に綿密な取材を施し、『脳死』では安易な脳死判定基準に鋭く切り込んだ。科学を立花ほど非科学者の下に届けてくれた書き手はいない。浩瀚な書物である『ロッキード裁判とその時代』『巨悪vs言論』『天皇と東大』『武満徹・音楽創造への旅』は余人の及ばない仕事であり、また旅を語っても、哲学、キリスト教、書物を論じても冠絶しておもしろい。
立花隆はどのようにして出来上がったのか、そして何をしてきたのかーー。それに迫るべくして、彼の記憶の原初の北京時代から、悩み多き青春期、中東や地中海の旅に明け暮れた青年期、膀胱がんを罹患し、死がこわくなくなった現在までを縦横無尽に語りつくしたのが本書である。彼が成し遂げた広範な仕事の足跡をたどることは、同時代人として必須なのではないだろうか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
193
いろんなテーマで書かれていたが、冒頭の引き揚げ体験が印象に残った。2020/01/25
ねこ
155
2021年4月に亡くなったジャーナリストで「知の巨人」立花 隆さん(享年80)の本書は自叙伝です。幼少時代IQテストが飛び抜けて高く、小学生の頃は既に世界文学を多く読み、1960年東大生にして原爆惨状を伝えるためヨーロッパに渡り世界の知見を広め、政治、宇宙、サル学、脳死、生命科学など、その時興味があったことを徹底的に追求し文章にし、最終的には自分の死にすら正面から向き合い私たちに伝えてくれる。正しく知の巨人!凄い人だなぁ。立花隆さんの書庫「ネコビル」には未だ8万冊があると言います。行ってみたいなぁ。2023/06/18
まーくん
120
今の日本で「知の巨人」といえば立花隆さんと佐藤優さんがすぐに思い浮かぶ。勿論、大学などには他にも数多、知識人は居るだろうが、”いかにも”という感じで露出が多いのはこのお二人のような気が。本書は立花さんの自叙伝のような内容だが、幼少の頃からの、知識欲、実行力にはもう感嘆しかない。”人間の肉体は、結局、その人が過去に食べたもので構成されるように、人間の知性は、その人の脳が過去に食べた知的食物によって構成される…”これには書物のほか、他人と交わした会話や自問自答も含まれる。それは大きな意味での「旅」だという。2021/04/05
KAZOO
116
立花さんの著作を中心とした自伝とでもいうべきものなのでしょう。私はこの作品群のほとんどを読んできているのですがこの人物については文藝春秋の社員であったということは知っていましたがそのほかのことについてはほとんど知りませんでした。この本を読んで私と同じ考え方(特にマスコミのワイドショーなど)なのでまたいろいろ読みなおしてみようと思いました。2020/11/29
trazom
104
立花さんは、このところ立て続けに、人生を振り返る本を出版されている。過去の出版と重複する内容ばかりで、そこには、次々と新しい領域に挑戦する立花さんの姿はなく、かつてのファンとしては複雑な思いを禁じ得ない。宇宙、サル学、脳死、臨死など、理系の専門的な分野を深く掘り下げた作品を、ワクワクして読んだ日々があった。知的好奇心を持つことの素晴らしさと、好奇心を理解へと深化させる手法の巧みさを、それらの著作から教えられた。今、「立原道造」と「形而上学」を書きたいという立花さん。まだまだ「知の旅は終わらない」でほしい。2020/06/18




