ルネサンス庭園の精神史:権力と知と美のメディア空間

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ルネサンス庭園の精神史:権力と知と美のメディア空間

  • 著者名:桑木野幸司【著】
  • 価格 ¥4,752(本体¥4,320)
  • 白水社(2020/01発売)
  • ポイント 43pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784560097113

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内容説明

「全能の神は初めに庭園を造った。それは本当に人間の楽しみの中で最も純粋なものである」フランシス・ベイコンは、「庭園について」という一文をこう始めている。ルネサンス・イタリアにおいて、庭はそれ自体が時代のもっとも繊細な美学の具現化であると同時に、ペトラルカやボッカッチョの抱いた自然観を反映し、占星術の思想によれば植物は地上の星であった。庭は読み解きを必要とする総合芸術だったのである。
歴代の教皇たちやメディチ家ら貴紳たちが、財を蕩尽してつくりあげた庭は、最先端の自然科学・工学技術や博物知識の集積場であり、古代彫刻や同時代アートの屋外展覧スペースであり、強力な政治的メッセージを発するプロパガンダ装置でもあった。ラッファエッロの名を知らしめることになった、ヴァティカン宮殿の「署名の間」の傑作壁画は、部屋から外を眺めたときに生まれる視覚効果を意識して描かれている。室内装飾も庭と同じグランド・デザインの一部であった。
本書では、ヴィッラ・デステに至る数々の名苑奇園を具体的に読み解いていく。狭義の庭園史や美術史の枠におさまらない、領域横断的な視点をもったルネサンス文明史である。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

68
ルネサンス庭園についての本。同庭園の特徴として人工洞窟(グロッタ)、軸線と幾何学による空間構成などがありますが、それらがどのように獲得されていったかがヴィラ・デステなどの作例を眺めながら語られます。了解されるのは、水理工学、建築術の粋を集め、新大陸等から珍奇な動植物を蒐集したそれには、施主の威信や文化的洗練度は勿論、自然をも制御する人間の無限の可能性を評価するルネサンスの精神、有為転変の一切や世界の体系を探求する時代の哲学が反映されているということで、科学と実利を美に昇華してゆく庭園の物語を堪能しました。2023/09/12

oDaDa

2
ルネサンスーマニエリスムの「あやうい爛熟の極み」。これは神聖ローマ帝国皇帝カール5世の「ローマ劫掠」によって一旦灰燼に帰す。その爛熟の中心には何があったのだろうか。聖書に記された楽園の如き人工庭園、メディチ家の博物学的関心とコレクション空間、幾何学への幻想と植物園、衒学の極み、知的な遊びとしてのマニエリスム庭園に備わるグロッタ…読めば読むほどに、楽園を旅しているかのような錯覚に見舞われる。かくいうほどに豊かな長靴の形をしたアルプス以南の地、ヨーロッパ中の憧れ、グランドツアーの地、そして「終わらない宴」……2022/11/28

Go Extreme

1
庭園文化: メソポタミア文明 古代ローマ ルネサンス 美概念 空間構成 建築 文学 哲学 科学 デザインと要素: 幾何学的配置 自然の要素 水の流れ 噴水 庭の中心 季節の変化 天候 ヴィッラ・デステ 百隕水の通り 社会的・文化的意義: 権力の象徴 富 政治的メッセージ メディチ家 ヴィッラ フィレンツェ 公共性 植物園 教育 研究 現代への影響: 庭園文化の継承 設計原理 美学 庭園デザイン 新たなデザイン理念 学際的アプローチ 歴史 社会学 環境学 庭園のシステム2025/02/16

cocomero

0
ルネサンス期における庭園の展開について、ヴァチカンやラツィオまたトスカーナに点在する代表的な作品を事例に、フィールドワークと数多の資料から得られた知見をもとに、非常に詳しくまた丁寧に論じられる。様々な植物また学知と技術を導入してつくりだされた庭は、百科全書的な空間となったが、なんといっても、倦み疲れた心身をリラックスさせる、憩いの場であった。その趣向を凝らした仕掛けや装置は人々を楽しませるに一役かった。作庭の方法からは、特に庭の主の思いや術策ひいてはまさにその主の生きた時代を特徴付ける精神が垣間見られる。2020/03/27

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