講談社文芸文庫<br> 長い時間をかけた人間の経験

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講談社文芸文庫
長い時間をかけた人間の経験

  • 著者名:林京子【著】
  • 価格 ¥1,254(本体¥1,140)
  • 講談社(2020/01発売)
  • ポイント 11pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784061984073

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内容説明

圧倒的事実の<生と死>――8月9日に、すでに壊された<私>。死と共存する<私>は、古希を目前にして遍路の旅に出る。<私>の半生とは、いったい何であったのか……。生の意味を問う表題作のほか、1945年7月、世界最初の核実験が行われた場所・ニューメキシコ州トリニティ。グランド・ゼロの地点に立ち《人間の原点》を見た著者の苦渋に満ちた想いを刻す「トリニティからトリニティへ」を併録。野間文芸賞受賞作品。
◎林京子――私は立ちすくんだ。地平線まで見渡せる荒野には風もない。風にそよぐ草もない。虫の音もない静まった荒野は自然でありながら、これほど不自然に硬直した自然はなかった。荒野は、原子爆弾の閃光をあびた日以来、沈黙し、君臨していたガラガラ蛇の生さえ受けつけなかった。大地は病んでいたのである。<「著者から読者へ」より>

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

yuki

7
戦後78年。林京子さんの文章は確か高校の教科書で読んだので印象に残っています。作品の中で被爆したS医師の言葉が印象的でした。「…しかし、僕は希望を捨てません。希望は一般の人たちです。庶民が(核の時代を)生きのびる知恵と力を得るでしょうね」。毎日伝えられるガザのニュース。なんとかイスラエルを止められないのでしょうか。2023/11/15

みずいろ

5
題名が気になって借りてみた。原爆の傷の深さを思い知る。長い時間をかけて作者の中で形づくられていく想いや言葉は、ひとつひとつが重い。人間たちより先に原爆の被害を受けた木や土に作者が心を寄せるシーンが印象的だった。2010/07/02

belier

2
1945年8月9日に長崎で被爆した作家の林京子。表題作はエッセイ風の語りだが、本人は狂言回しの役割に近い存在。主役に据えようとしたのは、同時に被爆した女学校時代の友人たち、また、それより恵まれない境遇の、偶然話すことになった同世代の被爆した女性だ。原爆がいかに彼女たちの人生を狂わせたか、淡々と、しかし心に染み入る文章で書いている。もう一つの作品は、史上初の核実験が行われた場所を訪れる旅行記。被爆のときに涙しなかった作家はそこで涙を流す。たしかにデビュー作「祭りの場」では主人公の感情が麻痺してた印象だった。2022/08/09

ayako

2
読むのが苦しくなるようなエピソードが続くが、描写がリアリティをもってこちらに訴えかけてくるので、一気に読んでしまった。2016/02/11

mny

1
1人1人のエピソードがつらかった。最後の短編はまた別の本でもよかったような。2014/08/27

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