内容説明
その犠牲者は、一〇〇〇万人──四〇〇年にわたり大西洋上で繰り広げられた奴隷貿易の全貌が、歴史家たちの国境を越えた協力によって明らかになってきた。この「移動する監獄」で、奴隷はいかなる境遇に置かれたのか。奴隷貿易と奴隷制に立ちむかったのはどんな人たちか。闇に閉ざされた船底から、近代をとらえなおす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
64
大西洋奴隷貿易は、利益を生みだすもっとも重要度の高い貿易の一つ/ウィリアムズ(「資本主義と奴隷制」)は「近代世界システム論」をかなり前に先取り/著者が参照しているTSTD1、2が公開されるのは今世紀初め。ヨーロッパ、アフリカ、両アメリカにとって大西洋奴隷貿易の持った意味は、今後いっそう明らかにされていくのでしょう。それは、例えば私が子どもの頃から教えられた世界史を書き換えていくことになるのだろうと思います。/ヨーロッパ各国、両アメリカの諸国、アフリカ各国の教科書で現在どう取り上げられているのかな。2022/02/15
パトラッシュ
63
地球上で最大の交易品は人間だと聞いたことがある。難民や亡命者、出稼ぎに不法移民などの原点は、400年に及ぶ奴隷貿易にあることを明らかにする。どの国も安い労働力による資本の蓄積なしに産業発展はなかったが、欧州は奴隷による植民地開発でそれを行った。奴隷制で発展した植民地は独立後も捨てられず、廃止されるまで南北戦争を始め多くの内紛を経ねばならなかった。言及されていないが社会主義国の経済も、反対者を強制労働させることで基盤を築いた。その結果出来上がった格差社会で、21世紀も実質的な奴隷制は続く。人類史は奴隷史か。2020/12/11
skunk_c
53
エリック・ウィリアムズ『資本主義と奴隷制』(再読中)に始まり、ウォーラーステイン(R.I.P.)の世界システム論を俯瞰しながら、奴隷船と奴隷制度の歴史を追う。特に奴隷船の実態としばしば起きた奴隷船内の叛乱、奴隷制度の廃止と奴隷船の関係がよく分かった。また、特にイギリスの奴隷船・奴隷制廃止にクウェーカーなどの宗教的宗派が大きくかかわっていたことも重要か。少し物足りなかったのが、アメリカ南北戦争の戦略的な奴隷解放令に対し、イギリス(ヨーロッパ)が具体的にどんな反応を示したかが書かれていないこと。知りたかった。2019/09/05
Koichiro Minematsu
52
きっかけが浅はかでごめんなさい。新型コロナウィルス感染で大変なダイアモンド・プリンセス号。豪華客船が一転、私には奴隷船扱いのことのように見えて。本著を読んでみるとヨーロッパ国の南北アメリカ、アフリカ国への支配構造と思いきや、いや、そうなんですが、アフリカ社会の元々の奴隷制の影響もあり、極々一部でしょうが、飢饉から自らを守る自発奴隷もいたとのこと。問題が起きると個人責任が問われてしまう社会性も、本当の恐怖かも。2020/03/08
サアベドラ
32
世界史の闇、大西洋奴隷貿易の実態と廃止までの道のりを専門家がまとめた新書。2019年刊。奴隷貿易は海賊などと並ぶアトランティック・ヒストリー(環大西洋史)の主要テーマの一つで、オンライン・データベースの拡充など近年進展著しい研究分野。現在のデータによると、400年間で約1200万人もの人々が奴隷船に押し込められ、新世界へ送られていったという。初期に奴隷制を正当化したのもキリスト教の教理だったが、一方で後に廃止のための運動を始めたのも熱心なキリスト教徒(クウェーカー)。宗教とは一体何なのだろうか。2019/10/20
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