内容説明
虐待された子どもたちは心だけでなく、脳の発達にも障害が生じる。そして自閉症などと極めて似た症状や問題行動に苦しむ。子ども虐待と発達障害という今日明らかになり始めた問題について第一人者の著者が臨床事例から明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みのゆかパパ@ぼちぼち読んでます
32
児童虐待が子どもの育ちに及ぼす影響を、医師である著者が豊富な症例にもとづき明らかにした書。その影響が心理的なものにとどまらず、脳の機能にまで及ぶとの指摘が何よりショッキングで、この問題の深刻さを改めて思い知らされることになった。虐待から命を救えたとしてもそれで終わりでなく、その後の育ちのサポートや虐待の予防に力を注ぐことが大事だということも痛感させられた。ぜひとも多くの人に読んでほしい一冊だと思った。ただ、勉強不足ゆえに発達障害と虐待の関係性を整理できたとまでは言えないので、そこは追って学ぶことにしたい。2012/06/03
さなごん
27
虐待が子どもの脳に与える影響の大きさ!虐待事例いくつか見てきたので深く考えさせられた。2015/06/30
小鈴
15
教師向けに書かれた内容をリライトしたものでタイトルの意味するところは、一見発達障害に見える子ども達のうちには虐待が原因のものがあり器質的な発達障害とは区別すべきで、その見分け方など詳述。それにとどまらず幼児虐待による影響が年齢とともに変化し、然るべき対処をしなければ虐待が再生産(世代間連鎖、加虐者に)される過程は凄まじい。虐待は脳に大きく影響を与え(器質的なものよりも)、被虐者の治療は敗戦処理であり、予防が決め手なのを実感。一方で脳の構造を変えながらも生き延びる生命力を感じずにはいられない。2015/07/15
ヨミナガラ
15
“筆者は現在、被虐待児を第四の発達障害と呼んでいる。第一は、精神遅滞、肢体不自由などの古典的発達障害、第二は、自閉症症候群、第三は、学習障害、注意欠陥多動性障害などのいわゆる軽度発達障害、そして第四の発達障害としての子ども虐待”“ここでくれぐれも注意をいただきたいことは、この不安を治める働きをする愛着者のイメージとは、感覚と感情が結びついた非常に官能的なものだということである〔…〕母親のひざの暖かさ〔…〕心地よさの記憶である。愛着の中核はこのような官能的な記憶である。”2014/10/31
こばまゆ
13
虐待が脳に及ぼす影響についても、詳しく書かれている。発達障害の診断や、疑いの中に、虐待されている子ども達が同じような症状をみせるという。脳に与える影響から、ADHD様の行動が出てくる子ども達の事例には、やっぱりな・・と思った。虐待については、やはり、西澤哲と、杉山登志郎が、最前線なのではないだろうか。乳幼児における愛着の形成は、人生においてずっと影響を及ぼす。乳幼児の時期の子育て支援の重要性を改めて思う。虐待後のケアは膨大なケアと時間がかかる。著者も言っているが、なにより、予防が大事なのだ。2015/07/13