内容説明
名著『遠野物語』の翌年世に出た、柳田國男36歳の著作。「支那では古くから「万姓統譜」などいう書物があって、これによれば家々の歴史もわかり、間接には数千年来の国内植民の趨勢も明らかになることであるが、不幸なることにはわが邦にはこの種の書籍もなく、しかも度々の混乱を経た今日となっては、将来これを作製すべき希望もはなはだ乏しいのである。せめてもの希望として、たとい明治になって家号を付けた家々まで、その由来を明らかにすることができぬまでも、せめては地方地方の旧族名門、およびいわゆる士族という階級だけは、多少の辛苦をすればわかるのであるからして、今のうちにその家号の索引をこしらえておきたいものである」(本書より)
感想・レビュー
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わ!
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なぜか突然発刊された柳田國男翁の本である。おそらくは全集などを買えば、その中の一冊の中の一章に含まれているのだろう。…が、なぜわざわざこの話だけを、このタイミングで一冊の本にして発売したのかぎわからない。もちろん、その内容は、タイトル通りの「名字の話」である。日本における「名字」がどのようにして、成立してきたのかを柳田翁の語りで述べられる。それはまるで、遠い御伽話のようでもある。2020/03/21
かわかみ
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青空文庫で読んだのだが、日本人の名字の由来から、武士が興隆して寄進地系荘園が発展していく様、名字が分かれても一族の結束がある程度維持されてきたこと、明治になって戸籍が整備されたときの混乱など、興味深い話が縷縷紹介されている。民俗学には民話や習俗の記録だけではなく、史学を補完する面があることがわかる。2021/02/23