内容説明
為政者の徳とは何か。
現代にも通じる王と宰相の関係を描く長篇!
古代中国・晋の宰相として国を支え続けた趙一族の盛衰を、
歴史と運命への透徹した視点をもって描いた初期の傑作長篇。
中国春秋時代の大国・晋。
この国の重臣を代々務めた趙一族。
太陽 の如く酷烈な趙盾、族滅の危機に瀕した趙朔、
名宰相・趙武、王子 朝の乱を鎮定した趙鞅、その子趙無恤……。
二百年にわたる一族の興亡を、透徹した歴史観と清冽な筆致で描いた著者初期の傑作。
指導者に求められる「徳」のありようをめぐる物語。
解説・平尾隆弘
※この電子書籍は1994年に刊行された文春文庫の新装版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
94
春秋時代の名君重耳に仕えた趙衰から始まり、無恤までの趙一族の歴史に関わる思想と盛衰を多くに逸話を織り込んで描いた長編歴史ロマンである。中国の春秋時代をほぼ描いたことになる。まさに歴史は人間の存在によるとことが大きいことが分かる。趙氏の盛衰にも、多くの人物の存在がある。趙朔が死に、趙一族の滅亡の危機に瀕した時に、遺児の趙武を杵臼と程嬰が力を合わせて守り抜く逸話等はなかなか読ませる。中国の歴史の奥深さを再認識する1冊。日本と違った歴史風土が中国にはあるのだと再認識することになった。 2022/05/08
しゅてふぁん
42
春秋時代の晋、趙一族七代二百年にわたる連作短編集。イチ押しは『月下の彦士』。趙朔の時、友人の程嬰と賓の杵臼が活躍する話。さすが映画にドラマ、舞台になってるだけのことはある。この時代の中国において主人に必要なものは「徳」だったということがよくわかった。徳とは何ぞや。歴史に詳しければ詳しいほど、いかようにも深読みできそう。2020/07/06
布遊
33
宮城谷さん初読み。わたし地方出身で、市政70周年と言うことで講演会がある。その前に1冊は読んでおこうと思い手に取った本だが、中国史の知識が全くなく、なかなかページが進まない。人名も覚えられないので、メモしながら読むが、その漢字も難しい。内容は興味深く、慣れればもっとスムースに読むことができる気がするが・・*大才を悪行にむかわせず、善行にむかわせるのが礼。2024/11/02
鮭
9
春秋時代の趙氏を描いた一冊。複数の短編集だが、一本の物語として成立している。孟夏の太陽たる趙盾も他作品だとまた異なる印象で描かれているのが印象的。個人的には月下の彦士が好き。成長した報告を死した仲間に伝えにいくだなんて、なんという激情だろう。生き残った者が勝ちではないのである。支えていく者は単純な死より重い役目を負って死していく。2023/07/30
日・月
8
重耳の臣下趙衰の子「盾」,その子「朔」,その曾孫「鞅」,その子「無恤」に関わる4編から成る。巻頭, 昇る日の紅色と雪の白というコントラストに始まる。同じ色の組み合わせでも, 雪景色の中で夕日の赤が消えゆくラストは対照的で, 趙家が晋から自立し試練の戦国時代を迎える暗示となっている。「月下の彦士」趙朔の子を保護した程嬰は, 元曲の趙氏孤児で医者という設定になったようだ。想像するに, 傑出した人物が長い戦国時代に短命で失われ, 惜しくて仕方ないのだが, 戦国時代だからこそこのような人々を輩出したのだろうか。 2023/05/16