集英社文庫<br> あるいは修羅の十億年

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集英社文庫
あるいは修羅の十億年

  • 著者名:古川日出男【著】
  • 価格 ¥913(本体¥830)
  • 集英社(2020/01発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784087440478

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内容説明

テロ、移民、スラム化した東京、菌糸の生物兵器…2026年の“未来の歴史”を幻視せよ。舞台は2026年東京。放射能汚染によって隔離された被災地「島」からやってきた、天才的騎手・喜多村ヤソウ。東京オリンピック後、スラムと化した“鷺ノ宮”を偵察する「島」生まれの喜多村サイコ。先天性の心臓病を患う少女・谷崎ウラン。17歳と19歳と18歳の3人が出会うとき、東京を揺るがす事態が巻き起こる――。日本、フランス、メキシコ、そして「島」。遥かな未来になけなしの希望を託す、近未来長編。

目次

1 あしあと(熊谷亜沙見のレポート)
2 二つの水上都市といちばん最初の大きな鯨
3 十七歳。空港から競馬場まで
4 小型原子炉がミュージックを奏でる
5 きのこのくに(喜多村冴子の小説)
6 二つの茸料理のレシピ。属領にて
7 小説家の誕生と引退
8 牧夫および二ヵ所で爆発したものの委曲
9 属領のルカ――茸レシピ再び。二〇三〇年問題
10 久寿等にくらす(谷崎宇卵のスケッチ)
11 十三歳。その宇宙論
12 十八歳。β版サイトで心臓と眠る。いちばん大きな心臓
13 分身譚
14 サラブレッドは加速する。大井シティの卵
15 依然として小説家
16 かつての十七歳。消し去られた死、ゆえに削除(デリート)
17 記憶よ悔い改めよ(ガブリエル・メンドーサ・Vの手記)
18 原東京人たち。国家以前にさかのぼる。神託の開始
19 P2KP2KKP。真の父祖
20 匂いがない物体は食べられない
21 秘すれば造花(ZOKAのカタログ)
22 サイコのサイケデリカ探訪。実母および非実母譚
23 属領の実母――米料理のレシピ。年下の姉
24 ボーイ・イーツ・ガール
25 その骨々のオベリスクが
26 十九歳。父親を産むストラテジー
27 王位継承前夜譚
28 森の指導者および神事のための少々の条件
29 武士道とは死ぬこと(額田真吾の遺書)
30 たてがみを蓮茶で洗え・第一章
31 ミュージックすなわち鯨歌
32 たてがみを蓮茶で洗え・第二章
33 たてがみを蓮茶で洗え・第三章
34 続きのこのくに起動
35 たてがみを蓮茶で洗え・跳躍章

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

masa

62
オリンピック反対なのにフジロックを観る僕にダブルスタンダードと君が言う。不要不急という蔑みに、母のつぶやきがダブる。産まなければ良かった。やがて言霊は真実を支配する。人前で演奏を禁じられたまま好きなバンドが次々壊れていく。だから僕は聴かれない音楽と無音との違いを探して証明したいんだ。できなければ人間が生き延びる犠牲にロックは死ぬだろう。その解をここにみた。文章から迸る響き。"意味"ではなく"音"としてのことば。想いは意味では伝えきれないから音に宿って国境を越える。憎しみはもう十分だ。世界を愛してください。2021/08/28

さっとる◎

40
空っぽの手に本(フィクション)。武器を持たず物語だけを握りしめて闘おうとする私をどうか笑わないでほしい。殺すものが生かすものでもあることを、私は私が生きることで証明しようと思う。空と海が国境を意識しないことは、打ち上げられるものたちが証明してくれる。大きすぎた波がもたらしたのは多すぎる死と巨きすぎる鯨の死ではあるけれど、そこから命が生まれ直したことは想像力が証明してくれる。ハロー物語を読む阿修羅たち。世界の歴史を奪還せよ、記憶を創造せよ。そんなの偽物じゃないかって?ふふ、知ってる。でもいるんだよ、物語が。2020/03/20

hide

18
ここにも森があった。翼を持たず逃げる事も叶わなかった森が更に広がりをみせる。森には当然、幾多の木があるだろう。一本一本の木には物語がある。それぞれの物語が集まった森はどんな物語になる?惑わされるな。それは実体ではない。一本の木ですら同じ。本体は地中に張り巡らされた根にある。根こそぎ歴史を覆す10億年前の神話の中に。神話は何を物語るのか。まるで茸のように胞子を飛散させ土壌に撒き散らかす鯨歌が突然ブツリと途切れる。そうだ。これが古川日出男だった。2021/04/17

東京湾

8
「生き物は、場所を、環境にするのね」2011年、震災により2基の原発が爆発、汚染された地域は「Shima」として先進諸国の環境実験地となり、2020年、復興の象徴たる五輪では汚染土によるテロが発生、そして2026年、スラム化する都市、疑似家族、BC兵器、移民...混迷する新時代とそこに生きる人間の在り方を描く一代クロニクル。馬、茸、鯨の三つのイメージが基盤となって、物語は駆動し拡大する。鯨から生まれた東京というのは叙事詩めいていて素敵だった。震災後の日本、未だ見果てぬその可能性を壮大に夢想した傑作だ。2020/03/13

YH

4
設定が似てる訳でもないのに、愚者と愚者をなんだか思い出してしまう。福島出身の古川さんだから描けた話なのだろうな。被災地なのに風評被害を受けた事に対しては思うことも当たり前だが沢山あるんだなと感じた。2021/06/26

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