内容説明
4人を殺害した暴力団員に下った判決は死刑。被告は、弁護人のおこなった控訴申立てを自らの意志で取りさげ、自分の生涯と犯罪歴を手記に残して絞首台に消えた。この〈潔い振るまい〉は何を意味するのだろう……。現実の殺人事件に取材し、さらに本人の手記を加えて構成、殺人犯の〈人間〉を追求した異色作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ted
6
'83年3月(底本'79年4月)刊。○4人を殺害して死刑を宣告された北九州のヤクザ・川辺敏幸が控訴申立てを自ら取り下げ、潔く刑に服すまでの軌跡を川辺本人の手記を元に、著者が小説風に再構成したノンフィクション。事件の背景には元来の激しやすい性格に加えて、複雑で不幸な生い立ちがあった。「少しでも延命するための方便としか思えない」として控訴を潔しとせず、また誰かを庇うために無期懲役になる可能性を自ら放擲したような節もある川辺には、4人も殺めた者とは思えぬ別の清々しい一面もあった。'78年11月16日、死刑執行。2015/08/28