内容説明
「これは絶滅戦争なのだ」。ヒトラーがそう断言したとき、ドイツとソ連との血で血を洗う皆殺しの闘争が始まった。日本人の想像を絶する独ソ戦の惨禍。軍事作戦の進行を追うだけでは、この戦いが顕現させた生き地獄を見過ごすことになるだろう。歴史修正主義の歪曲を正し、現代の野蛮とも呼ぶべき戦争の本質をえぐり出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
261
近代戦で国家と国家が総力を挙げて広い国境線を巡って、戦うとこうなると言う貴重な事例だなと思う。日本は狭い島嶼戦になるしイメージしづらいが、中々大陸上の戦いって海という隔たりがないから悲惨なものになると知った。にしても悲惨と言うしかないレベルで犠牲者が多過ぎるし、今後は核兵器による戦争中心になるので、こういう事が起きにくいとは思うが、こういう戦争が第二次世界大戦であったことも忘れてはならない。2019/07/31
旅するランナー
256
その規模の大きさ、戦闘の激しさ、被害者の多さがつかみきれない、人類史上最大にして、最も血生臭い戦争。血で血を洗う皆殺しの収奪戦争・絶滅戦争・絶対戦争。ヒトラーの狂気vsスターリンの強権だけでなく、ドイツ国防軍の加担・国民の共犯、ソ連による共産主義イデオロギーとナショナリズムの融合、両国の選民思想による他国民の蔑視などがルール無視でぶつかり合い、空前絶後の暴力を生み出す。他人事では済まされない実態を見るにつけ、この未曾有の殺戮戦争を人類の体験として理解し反省し繰り返さないことが大切なのだと感じます。2020/03/30
岡本
243
Kindle。本書を読む前の独ソ戦のイメージは、奇襲にも近い開戦から一気呵成に独軍がモスクワ近辺まで攻めるも冬将軍の到来と無茶な命令で兵站が延びきった事による攻勢限界が重なり、準備の整ったソ連軍に押し戻され、連合軍のノルマンディーとイタリア上陸で戦線が増えて、ズルズルと敗戦というものだった。しかし、実際には独ソ両軍も指導者によるデバフもあり順調ではなく、反転攻勢からはソ連軍が長期的な作戦術に優れた点が勝利に繋がった。ヒトラーが全部自分で進めようとしたのも失敗に繋がり、その辺りはスターリンの方が上手か。2024/06/15
rico
242
本書によれば第二次大戦の国別の死者は次の通り。日本 人口約7100万人→死者約300万人(4.2%)。対して、ドイツ6930万人→死者800万人(11.6%)。ソ連 1.89億→2700万人(14.3%) 日本もさることながら、ドイツ、ソ連の犠牲者の数は凄まじい。作戦の展開や意思決定のプロセスなどを丹念に追いかけ、両国の戦いが何故こんな結果をもたらしたのか、読みといていく。ヒトラーとスターリン、2人の特異な世界観を持った独裁者が同時代に存在した不幸。1つ1つの事実の向こうに地見える地獄。読むのが辛かった。2020/01/15
読特
226
沖縄戦、特攻隊、東京大空襲、原爆・・。日本人の死者は300万人。しかし、それを遥かに上回ったのが独ソの死者。特にソ連は桁違い。先の大戦の結果である。一体何が起きたのか。「バルバロッサ」の奇襲攻撃。「ドイツ軍は強かったが、冬将軍に負けた」という漠然としたイメージ。もちろんそんなに単純なものではない。初めは勢いがよかった。しかし所詮は勝ち目がない戦い。そこは真珠湾と共通する。なぜ始まってしまったのか?戦後の秩序を決めた経緯は?200ページ強の丁寧な解説。もっと知りたい、もっと考えたい、よいきっかけになる。2020/06/26