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内容説明
満州事変とは何だったのか。事変に先立つ一九二〇年代を民族自決の理念が登場した時代とするなら、この時代の中国は、満州族やモンゴル族、ウイグル族などの民族自決を否定していた。満州事変から支那事変を経て大東亜戦争に至る日本近代史について、われわれは帝国主義と民族主義の対立を絶対化する革命思想からではなく、長期的な歴史的文脈の中で、かつ、様々な制約化の行動の中にも新たな理念の影響を読み取る多面的、複合的な視点から再評価すべきである。「侵略」論を超えて世界的視野から当時の状況を知り、歴史認識の客観性を求める試み。 【目次より】●第一章 清朝の近代化とその変容 ●第二章 近代日本の形成と日清・日露戦争 ●第三章 辛亥革命、第一次世界大戦と東アジア ●第四章 一九二〇年代の国際理念と東アジア情勢 ●第五章 満州事変
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
46
満州事変に至るまでの清朝の近代化や明治以降の日本の形成、さらには欧米各国の東アジアや東南アジアへの進出から解き明かしています。中華民国自体は軍閥が割拠する内戦状態から脱することができなかっただけでなく、排日運動により日本人が虐殺される事件が相次ぐ中、わずか数名の軍人によって引き起こされたのが満州事変です。また周辺地域に対する中華民国の暴力的な行動が支那事変や大東亜戦争にもつながっていることがわかります。新書で370ページ近くあり読み応えのある本でした。2020/03/06
軍縮地球市民shinshin
14
1931年に勃発した満洲事変を「日本の侵略」として切って捨てるのではなく、日露戦争後の1906年からの長期的な視野によって新しい視点から考察する、というのが本書のコンセプト。元の本は『英米世界秩序と東アジアにおける日本』(錦正社)というもので著者の博士論文。2段組みで896頁という大著。こちらは未読だが本書はたぶんその簡約版。まぁ広い視野に立って見るというのは大事だが紙数が足りなかったのか、どうも個々の事象がどう関連しているのか説明が足りなく、単なる事実の羅列としか思えないところもあって、それが残念。2024/04/17
筑紫の國造
8
タイトルは「満洲事変」だが、扱う時代と国々はかなりの範囲に及ぶ。日中露はもちろん、英米をはじめとする欧州、東アジア各国など「世界史」の規模に近い。著者が最後に記したイデオロギーを超えた歴史的文脈、複合的な視点からという主張は全くその通りだ。「日本による中国侵略の典型」のように思われがちな満洲事変も、様々な視点からの研究が必要だろう。本書を手掛かりにすれば、もととなった大著『英米世界秩序と東アジアにおける日本』の理解を助けるだろう。ただ、皇道派を「自由主義を信奉」と記しているのは、どうにも意味がわからない。2020/09/22
あまたあるほし
5
いかにもって感じの本ですなぁ。2020/03/09
かろりめいと
4
「満州事変=中国侵略」という常識的理解を問い直す意欲作。反共の立場から、明治維新~塘沽停戦協定(満州事変終結)の時代を、新書版の370ページに、日本・中国(清→中華民国)・イギリス・アメリカ・ロシアソ連・満州・内外モンゴル・東トルキスタン(新彊)・インドシナ・インドネシア・ビルマ・マレー・タイの国内事情・国際関係をてんこ盛りに記述。知らない固有名詞(例えば、ジョソト盟とか)や、関税条約や裁判管轄の専門用語が多く、正直難しかったが、勉強になり、面白かったです。2020/08/18