内容説明
蝋の雫のような真珠のアクセサリー。それを見るたびに蘇る、密やかな思い……。若き日への感傷をつづる表題作をはじめ、娘の出生に疑問を持つ父親の愛憎を描く「渚にて」や、夫婦の日常を通じて「老い」を語る「冬の月」など。人生の深奥を見つめた、珠玉の名作7編を収録。第38回女流文学賞に輝く、自伝的作品集。この7つの物語の中にきっと、あなたもいる。 誰もが経験する、生と死、愛と性、青春と老い、そして希望と悔恨。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
70
原田康子の短編集。発表は1965~99年と30年以上に渡る作品が収められる。娘の父は妻の従兄ではないかと疑う男が登場する『渚にて』、自然に近い都会に住む女性の焦燥を描く『ひばり』『野猿』、兄妹の父への思いを綴る『骨』、いずれも足に地の着いた生き方をしながらそれでも存在するある種の不安を描いている。『冬の月』は作家でも主婦でもあった著者の自伝的な作品だが老いの寂しさや夫への思いやりが胸に沁みる。『蝋涙』は若くして亡くなった友人の韓国人男性を通して自分の生涯を顧みる作品。北国に生きる女性の芯の強さとどこか→2021/12/10
やどかり
14
初読みの作家さん。タイトルになんとなく惹かれた。短編集で、タイトルにもなっている「蠟涙」が1番よかった。造語だろうけれど、きれいな言葉だと思った。最初の3編は、その後どうなるのか、落ち着かない感じがする終わり方だった。後半は作者の体験なのだろうか。2014/09/21
あ げ こ
4
自伝的小説「冬の月」「蠟涙」が特にいい。丁寧に描かれた現在の生活と、生活の中でふと、自身の老いに気付く瞬間。長年連れ添った夫との生活は、穏やかで温かいもの。その中で輝く、遠い日の恋の思い出。過去を振り返る度に伴う感傷が、老いた彼女の心を癒す。「鳩」もまた印象的。ある女性が最期に愛人に遺したもの。語り手の慎ましい言葉によって浮かぶ真実は、愛人と妻の仲を裂く為、自身の病気を利用した女性の、愛人に対する執念を感じる、哀しいものであった。鳩を可愛がる優しい心も、強い執着も、等しく彼女の真実。静寂の中に苦味が残る。2013/09/24
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