内容説明
8年前、スイスの国境近い町で、自動車事故にあった夫。車を運転していたのは、日本人女性だった。その死に納得がいかないまま暮しに追われてきた歳月の中で、男との逢瀬が祥子の胸に、忘れていた甘い安らぎと希望を満たしていく……。という表題作のほか、「白萩」「変身」「隠れ谷」「双生」「二つの棺」「晩秋」を収録。揺れ動く微妙な女性の心の襞を細やかに描き上げた、全7作の名品集。
感想・レビュー
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みなみ
7
Kindle読み放題で芝木好子。「白萩」見合いで兄に断られ弟と結婚した秋子が主人公。結婚しても「この男に振られた」と引きずっている女ごころの描写が良い。「変身」東京から山陰地方の寺に嫁いだ雅子は、寺の暮らしに馴染めずに頻繁に東京に戻る。彼女には染色の才能があり東京でやっていけそうなのだが何度も婚家へ戻る。わかるようなわからないような……ほかに印象深かったのが「双生」。双子の話なのだが、ここに更に戦前から戦後の東京の街並み、たたずまいの雰囲気がよく、えもいわれぬ情緒を感じる。2023/11/26