内容説明
人間の根柢へ、文学の原理へ、深まりゆく作家精神の軌跡!
死を賭して受けた胸部手術、病室から見た月、隣室の線香の匂い、そして人間の業……。終戦からほどない、21歳の夏の一夜を描いた表題作をはじめ、人間の生と死を見据え、事実に肉迫する吉村昭の文学の原点を鮮やかに示す随筆集。自らの戦争体験、肉親の死、文学修業時代と愛する文学作品、旅と酒について、そして家族のことなど、ときに厳しく、ときにユーモラスに綴る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すしな
43
110-24.少年期を過ごした戦時中の話から1990年ぐらいまでの世相を語ったエッセイ集でした。1話目から死の話になるのですが、受け止め方を間違えると不謹慎と言われかねない話でしたが、その体験をしたことのある人から体験したことない人が何かを聞くというのは、ある程度無理して合わせて行かないといけないわけですけど、令和の時代だと怒られそうな内容もありましたが、文体がストレートなのでそれはそれで面白かったですし、結構、今でも普遍的に通じる内容も多かったので、楽しく読むことができました。2024/12/22
たぬ
32
☆4 随筆が70本。特に印象深かったもの①は「学生時代の同人誌」校長として安倍能成が登場したこと(しかもいい人)。木曜会の年長組がこんなとこに…!と色めき立つ私。別の話では三島由紀夫宅を何度か訪問したエピソードが。②は「二つの精神的季節」内の男女での戦争観の違いについて。確かにそうだなあ。昔の人だから今の時代にはそぐわない文章もあるけど(恒例:男は仕事で女は家庭、平日の学校行事に父親が参加していることに憤っている)それはそれでよいです。2022/07/01
モリータ
10
◆単行本は『精神的季節』として1972年講談社刊。講談社文庫版は単行本から他の著書と重複する内容を除き『月夜の記憶』と改題し90年刊、講談社文芸文庫版(本書)は旧文庫版を底本とし2011年刊。◆主に1950年代末~70年代初にかけて諸媒体に掲載された随筆集。来歴を語る私随筆のほか、社会論や男女論的なものも。後者は今となれば非常にオヤジ臭く、流し読み。◆「私には、二つの季節を生きた人間という卑屈感からのがれ出せそうもない。そして、それは、私自身をふくめた人間へのぬきがちあ不信感となって胸に焼きついて(続2022/09/29
にやり2世
3
エッセイと思って読むと重量感がある。背広の話よかった。妻から見た自分をつかみ損ねてる感じもいいなぁ。2016/06/11
Lila Eule
3
二つの精神的季節、私の中の戦中・戦後、靖国神社の三篇を読み、吉村昭の戦争に対しての考え、日本人の戦争に対する態度についての吉村昭の考えがよくわかった。手のひらを返したマスコミ、知的文化人は怯懦と。自身をふくめた人間へのぬぐいがたい不信感が胸に焼き付いていると。靖国神社は遺族が語り合い、慰めあう場と。政治に利用されては純粋さを失うと。2015/12/13
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