内容説明
経済格差の拡大と社会構造の急激な変化が、ポピュリズムの台頭と社会の分断をまねいている。これらは社会から疎外された人々による平等な「尊厳の要求」に起因する。「人種、民族、宗教」などを脱し「理念」のアイデンティティーへと説く民主主義再生への提言書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
エリク
26
人間の世界の仕組みの一端がわかる。 どうした行動が「ヒト」といわれるのか?2020/01/07
ヤギ郎
16
著者の代表作である『歴史の終わり』から続き、トランプ大統領誕生以後の文脈を分析することが本書の目的である。今現在世界中で起きている社会問題に、「アイデンティティ」を繋げることが本書の議論である。テレビ等で「Black Lives Matter」やフェミニズム運動が報じられている。なぜ彼ら彼女らは「必死に」運動に参加しているのか。この運動の裏には、単なる人種や性別の「差」だけでなく、自身の尊厳を獲得するための人間的行動が現れている。ネットコミュニティに誕生するアイデンティティについても議論される。2020/07/27
奏市
13
『歴史の終わり』を著した米国政治学者の書。世界中で個人や小集団の承認欲求が膨大し、憎悪や排外主義に訴えるポピュリズム政治化が進む社会をいかに寛容で民主主義が機能する社会へ変容させられるかといった内容。「リベラルで民主的な政治の価値観や、多様なコミュニティを結びつけて繁栄させる共通の経験を中心に構築する」ナショナル・アイデンティティの重要性を主張してある。それを基に福祉国家として成功している北欧諸国、それが希薄で多様性がマイナスに働いたシリアを例に挙げるなどして。民族ではなく理念で纏まる国家へ。/図書館より2021/02/14
zel
9
難しかったけど、きっと全然理解できてないけれど、面白かった。アイソサミア(同等とされたい欲求)メガロザミア(ほかより抜きんでたいという欲求)テューモス(気概)の関係に納得。アイデンティティを切り口に世界を見ていて世界の見え方がまた変わって面白い!人ってなんだ?自分ってなんだ?人権って?などいろいろ考えながら読む。2020/09/11
センケイ (線形)
8
歴史的経緯とともに、所属に基づく生の意味が丹念に整理される本だ。個人的にはギデンズの市民社会の方が好みだが、しかし多文化を包摂する自治に国家的まとまりが必要だとする当書の観点からも学べることが多い。経済的充足だけでも賄いきれない尊厳というものを描いている視点にも鋭いものを感じた。2020/05/31