内容説明
歌野晶午×江戸川乱歩――貴方を「非日常の興奮」に導く、超ミステリが誕生!
カメラマンの「私」が渋谷の道玄坂で出会い、交流するようになったのは、賢いが生意気な少年・聖也。その日も私は道玄坂のダイニングバーで聖也と話していたが、向いの薬局の様子がおかしい。駆けつけた私たちが発見したのは、カーペットの上に倒れた、上半身裸の女性だった。その後、私と聖也は事件を探り始める。しかし、私はあることに気がついてしまい、元の世界には戻れなくなっていた――(表題作)。
長崎港を訪れた「私」は、ビデオ通話で恋人に風景を見せながら旅する奇妙な男と出会う。男に誘われた路面電車での観光の車中、「私」はその恋人が、人気アイドルのヴィーナスだと明かされる。だが、2人の馴れ初めを語る男の話には、明らかにおかしな点があり……(「スマホと旅する男」)。
「人間椅子」「押絵と旅する男」「D坂の殺人事件」「お勢登場」「赤い部屋」「陰獣」「人でなしの恋」「二銭銅貨」……本格ミステリ界随一の騙しの達人が、江戸川乱歩の名作群を最先端テクノロジーでアップデートした、驚愕の翻案ミステリ短編集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
119
乱歩のオマージュ短編集。どれも現代を舞台にしたミステリだけれど、かの粘りつくような嫌悪を感じさせる倒錯的な世界観が盛り込まれ、普通じゃない味わいぶりを堪能した。今どきのガジェットや技術をふんだんに用いているのは新旧のミスマッチという著者の遊び心のように思える。スマホやAIを使うにしろ、やはり一番強烈なのは人の下卑た欲望を満たすための執念なのか。欲望の果てのオチがもたらす何とも言えない余韻に浸れた「陰獣幻戯」、ぶっ飛んだ推理合戦の果ての後味の悪さの「Dの殺人~」、「人でなしの恋~」の暗号のじいさんが印象的。2019/11/19
nobby
115
乱歩短編集3作読了しての変態的思考のまま(笑)そう言えば手元にあった歌野さんによるオマージュ作品を悪ノリして再読♬いや、生々しくて面白かった!6年前に楽しんだ時にも原作はきちんとチェックしていたが、ほぼ詳細覚えて味わえるニヤリや興奮は段違い!最先端テクノロジーへの味付けの上手さに加えて幻想やエロへのアプローチ堪能出来るのも絶品!最後には本家にも勝るとも劣らぬオチがあるのもたまらない!やっぱりもうタイトルからゾクゾクしっ放しは「椅子?人間!」本題ならずも「屋根裏ー」「二銭銅貨」もちゃんと扱われるのも嬉しい!2023/07/09
ちーたん
85
★★★★★江戸川乱歩の有名な作品を現代風にアレンジした7つの短編集。恥ずかしながら乱歩作品未読でして…でも知らなくてもめっちゃ面白かった!!どの話もわかりそうで完全には解き明かせないオチまでの構成がなんとも歌野さんらしくてニヤリ&満足😁オリジナルをご存知の方はさらに楽しめるんだろうな✨ネタバレしないよう元祖の作品名を列挙。『人間椅子』『押絵と旅する男』『D坂の殺人事件』『お勢登場』『赤い部屋』『陰獣』『人でなしの恋』※オリジナル既読の方も新たなミステリに出会えるはず🎵私は原作も読んでみたくなりました!2019/11/08
たか
65
江戸川乱歩の作品を現代に置き換え、凝った作りに仕上げた本格ミステリ集。 乱歩の原作を読んでいないものもあったが、それでも十分楽める。 しかしながら、本書の最大の楽しみは、やはり元ネタとの差異にニヤリとするところなんだろう。 いずれの作品も、結末に捻りがあり、ダークで、背筋がゾッとして、後味が悪い。 個人的には『陰獣幻戯』『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』が好みであるが、最終作の『人でなしの恋から始まる物語』の心温まるラストもいい。B評価2020/03/04
かめりあうさぎ
45
江戸川乱歩オマージュの短編7話収録の短編集。面白かったです。元ネタ知って読んでるから面白いのかどうかは分かりませんが、個人的にはハズレなしでした。何気に歌野先生の作品で一番面白い作品更新かもしれません。語るに落ちたくないので細かい感想は省きます。お勧め。2019/11/07