内容説明
彼は江戸時代における隠れたシャアロック・ホームズであった――。雪達磨の中から発見された死体。通行人を無差別に殺し続ける“槍突き”。江戸の難事件に立ち向かうは、神田三河町に居を構える岡っ引・半七。殺人、怪異、怪談。彼の推理はすべての不可思議に真実の光を当てる。今なお古びない捕物帳の嚆矢にして、和製探偵小説の幕開け。全六十九編の中から宮部みゆきが選んだ傑作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
201
図書館の新刊コーナーで見つけて、宮部みゆきセレクトなので読みました。100年程前に書かれた割には古臭さを感じずサラリと読みました。但し、あまり半七捕物帳の世界観には入り込めませんでした。オススメは、『槍突き』&『津の国屋』です。2020/01/03
sin
82
日常ならざる犯罪の傍らに、江戸庶民の営みが見えてくる。そのうえ綺堂の文章のなんとキリッと男前な歯切れの良いことか、改めて惚れ惚れとしながら読んだ。編者の作品のセレクトも良い、良いのだが敢えて言わして貰うと副題の“江戸探偵怪異譚”とあるのは外連味が過ぎていただけない。ましてや少女漫画誌の様な表紙で出版社の“売りたい”が興を削ぐ…とは云っても、これで綺堂の読者の層が拡がれば御の字である。2020/08/06
papako
70
ずっと気になっていた岡本綺堂作品。どれを読めばいいのかわからなかったので、宮部みゆき選のこちらを。100年も前に書かれたとは思えない。今の推理小説の面白さの原点を見た気がします。ただ収録の『槍突き』でひっかかってしまい、後半時間がかかりました。怪奇現象か?と思われる事件にも、しっかり答えが用意されていた。傑作選なので、いろんなタイプのお話があり楽しめました。2021/12/30
みつ
46
作者岡本綺堂は、生没年とも泉鏡花とほぼ重なる。宮部みゆき編のこの一冊は、「江戸探偵怪異譚」とあるが、解決は合理的なものとなるのが「探偵」の登場する捕物帳らしく、そこが鏡花との違い(もちろん読みやすさも)。「わたし」が日清戦争も終わりを告げた頃(p59)江戸の岡っ引きだった半七老人(この頃70歳過ぎ)の回想を聴くという形で物語は進む。事件の舞台は、文久、元治、慶応の頃というから明治維新も目前であるが、その気配もない江戸市中の物語に怪異現象がよく似合う。集中文化文政及び弘化の頃の二作では、半七は主役ではない。2025/02/04
セロリ
42
半七捕物帳から宮部みゆきが選んでまとめた一冊。8編が収められている。半七が「わたし」に昔話を聞かせてやるという構成で、半七がシャーロック・ホームズなら、「わたし」はワトソンくんかな、なんて思いました😆 どのお話も江戸の当時の様子が伝わってきて面白いのだけど、どうやらわたしは探偵ものは好きじゃなさそう。なんでもお見通しのヒーローが鮮やかに事件を解決する探偵ものより、泥臭く証拠や証言にこだわって、チームワークで進む警察小説の方が好みなんだと再認識した読書でした。2024/09/26