内容説明
新田次郎文学賞&本屋が選ぶ時代小説大賞W受賞!
維新に放浪された高須松平家の四兄弟。
石高わずか三万石の尾張高須の家に生まれた四兄弟は、縁ある家の養子となる。
幕末の激動期、官軍・幕府に別れて戦う運命に。
御三家尾張藩主となり、いち早く官軍についた次男・慶勝。
一橋家を継ぎ維新派と交渉した五男・茂栄。
美貌と高潔で知られた会津藩主、六男・容保。
京都所司代として兄・容保を補佐し、最後まで転戦した八男・定敬。
兄弟の誰か一人でも欠けていれば、幕末の歴史は変わった――。
埋もれた歴史を活写する傑作長篇小説!
解説・内藤麻里子
※この電子書籍は2017年12月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
名古屋ケムンパス
67
超ド級の名古屋本です。幕末から維新に至る激流が高須四兄弟の姿を通して克明に描かれます。御三家筆頭の尾張徳川家縁の高須四兄弟が尊王派と佐幕派に分かれて対峙せざるをえくなったのは、歴史のダイナミズムそのものだったのでしょう。将軍を輩出することのなかった尾張徳川家が将軍家の幕引きの役を担う脚本は、劇的にアイロニックでできすぎです。超傑作品2024/01/31
エドワード
53
幕末維新を命がけで生き抜いた、美濃高須藩に生まれた四人の兄弟。尾張徳川家を継いだ慶勝、一橋家に入った茂栄、会津松平家に入った容保、桑名松平家に入った忠敬。これほど数奇な運命をたどり、しかも全員が明治の世を生きた兄弟を私は知らない。彼らは徳川慶喜の従兄弟でもある。京都守護職の容保と京都所司代の忠敬はドラマなどで見聞するが、慶勝もまた幕末の激動を生きている。思いがけず官軍となる慶勝、旧幕府軍で徹底抗戦した容保と忠敬の間を取り持つ茂栄の絶妙な立ち位置に唸らされる。歴史にはやはり偶然があるものだ、と感じる。2021/05/27
けやき
52
幕末の高須4兄弟の話。尾張藩の徳川慶勝からの視点が多く、知らないことも多かった。他に会津藩の松平容保や桑名藩の松平定敬のことも分かりよかった。2023/10/23
sofia
50
幕末の高須四兄弟の歴史小説。私は最近まで高須四兄弟を知らなかった。尾張徳川家の家系図に慶勝→茂栄→義宜→慶勝→義礼(高松松平家)となっていて、そのごちゃごちゃの間にこんな物語があったとは!そして最後に四兄弟の写真が載っている。敵味方に分かれた激動の時代を超えて、四兄弟は皆、好きな方向を見ているのが印象的。今年一番の小説。2021/08/12
りー
34
美濃高須藩の松平家の兄弟たちが主人公。尾張徳川家当主=徳川慶勝・一橋徳川家当主=徳川茂栄・会津松平家当主=松平容保・桑名久松松平家当主=松平定敬。彼らは生家から各家に養子に出、幕末の動乱の中で敵味方に別れた。特に会津の容保様といえば、幕末好きなら伏し拝む存在。この4人が明治になって集まり、一緒に写真を撮っていたという事実を知り、涙。ネット検索したら見られました。人斬りでも新政府立ち上げでもない地味な幕末ものですが、譜代大名家のリアルを見ることができました。慶勝さんの写真作品展、東京でやってくれないかなー。2021/09/26