内容説明
自閉スペクトラム症、ADHD……
診断名よりも大切なこと
診断名はあくまでもその子の一部にしか過ぎません。「自閉スペクトラム症のAくん」「注意欠如・多動症(ADHD)のBちゃん」といった視点よりも、大切なのは、その子の目線にまで達して、気持ちを想像してみること。本書では、「発達障害」と診断される可能性のある子どもたち12のストーリーを例に、その子の気持ちを想像し、困っていることを探り、「仮の理解」を行う過程を解説。わが子の「不可解」な行動に、悩める親や支援者を応援する一冊です。
【「はじめに」より】
この本は、わが子の育ちを心配する保護者の方々に手に取ってもらえたら、読んでいただけたら、という思いで作りました。
すでに、発達障害について解説する本は、たくさん書店に並んでいます。飽和状態に近いと思っています。
その中で本書は、もしかしたら、わが子には「発達障害」という診断が付くのではないだろうか、あるいは周囲からの指摘に、思い悩み、漠然とした「不安」を抱えた保護者の方々に読んでいただけら、という思いで作りました。
<中略>
診察室では、時間もいただけますし、出会いを重ねることもできます。そして実際の診察室での話は、これ以上に生活状況は錯綜し、複雑になっているものです。なかなかきれいには収束しません。
でも、だからこそ、僕たちは日々の臨床で試行錯誤し続けます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さおり
45
「わが子の育ちを心配する保護者の方々に手に取ってもらえたら」という思いで作ったと冒頭に書いてありますが、支援者が読むべき本だよなぁと私は思います。最後までひととおり読んだあと、付箋を貼りながらもう1回しっかり読んだ。結果、付箋だらけだよ。でも、実際に親御さんの相談を受けているときにこんな風に考えを整理して助言できる気がしない。どうやったら自分のものにできるのか。っていうか、田中康雄さんを私のなかにおろしたい、何とかして。2022/04/22
はるごん
18
発達障害だからと決めつけず子どもや保護者の困っている事に寄り添っているのが読んでいて心地良かったです。診断された日から息子の行動を「これも特性かも」って決めつけて見ていた自分に反省。診断されたからではなく良いところや個性を見ていきたいと思った。2021/01/02
shizuca
8
子育てをしていて避けてとおれないのが、我が子の周りにいる子達との関わり。子ども同士の関係だから口を出すのは、とも思うけど、「◯◯ちゃんってひどいんだよ」や「あの子変だから遊ばない」と言うときに、その意見に同調して離れるのではなく、一度子どもと一緒にその子について違う角度から考えてみたい。そして我が子もそういう風に一面からでなく多角的に見てもらいたいし、そんな一面もあるよねと寛大に受け止めて欲しいし、受け止められて欲しい。いろんな子がいるからすべての子と仲良くするのは不可能だけど存在を認める事はしてほしい。2019/12/16
鳩羽
7
発達障害と診断されそうな子供の年齢別ストーリーを例に、親や保育士、教師、医者が、その子供が実際に感じている困難にどう対処することができるかを考えていく。発達障害と言ってもその症状は人によって場合によって様々であり、濃淡があり、変化していくもの。診断をするにしろしないにしろ、その対応は絶えず調整が必要となるので、子供の困りごとを解決していくことに重点を置く方が、長期的で臨機応変な対応が可能になるのだろう。むしろ適切な支援を受けられず、生きづらさを悪化させる方が恐ろしい。2020/09/11
chietaro
7
発達障害というよりも、子どもや保護者の困っているという訴えに耳を傾けているのが良かったです。保護者の不安に寄り添っている感じがしました。私は読んでいて過去のことを思い出し心が痛いです。みんなに優しい見方ができる教育・社会であって欲しいと思いました。2020/02/08