内容説明
後添いとして14も年上の男に嫁いだ彰子は、家にも、夫と息子の日々の習慣にも色濃く残る先妻の幻影に怯え、とりわけ彼女が丹精した牡丹の庭に憎悪すら覚えるようになった。後妻に入った女性の微妙な心のゆらめきと翳りを、柔らかな筆で繊細に描く表題作はじめ、「白い打掛」「隅田川べり」など、女性のさまざまな生き方を情感溢れる筆致でとらえた7編を収録。清冽な抒情で心理の襞を描く純文学短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みなみ
9
Kindle読み放題に入ったので……この人の作品では「葛飾の女」「湯葉」が好みで、少し前の時代の女性の生き様を細やかな心理描写とともに描いていてとても良い。今回の短編集は後添えになった女性が前の妻の面影に苦しむ2篇があり、印象に残った。また、この人の作品にはアーティスト志向の女性が何度も登場しており興味深い。2023/05/08
きりぱい
8
14歳も年上の男の後添いになり、そうなったには女の方にも事情はあったのだけれど、この家庭の悶々とするったらない。大学生の息子共々、亡き妻の記憶と習慣を守り、哀しいまでに妻の立つ瀬がない。もう我慢できない、昔のあの人の元へ・・と考え出した途端夫が病気。思わず、チッ!と言いたくなる。でも、その後の展開が悪くないのだ。他は「聲」「指輪」が割合よかったけれど、大体どれも、女の胸中に同じように居心地悪さを感じながら、最後は安堵というか、余韻を匂わす読後感というか。2013/03/14
ミカママ
4
なんつーかこう、女性がまだ結婚生活でいろいろ我慢しないといけなかった時代の女性たちの物語。でも日々の暮らしは今よりずっと豊かだったような。そして最後にはちゃんと救いがあるのがうれしい。この作家さん、初読みだったけど、今はもう活躍してないのかな?2012/11/12
ロバくん
2
ひと昔前の女性を主人公にした短編集。 女性が生きてくうえで、まだあまり自由がない時代のお話しなのですが、どの女性も共通し、多くを望まず、忍耐強く、精神的強さを感じました。 また作者の芝木さんは色に敏感なのでしょうか。 牡丹に着物、焼き物などから色にこだわりをもった作品が目立ちました。 2016/09/25
シーラ
1
[Kindle Unlimited]不意にKindleのオススメに現れた本。何繋がり?と思って読み始めたら、筆致や描く人に、乙川さんが連想された。後添えに入ったら夫子にも家にも色濃く先だった先妻が遺る、女中上がりの妻は働き詰めに働いて病に倒れる。蒲柳の質だが裁縫で必死に身を立てる女。夢を追って母子を捨てた男の軌跡を追う妻。不遇な女性達の、しかし強くしなやかな心。時代的に今よりも不自由だったのに、この心。陶芸や絵画なんかの書き方も乙川さんと似てて、でももう少し女性寄り。good job Kindle 2025/06/05