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内容説明
『失敗の本質』は、日本陸海軍の戦略・作戦の失態を鋭く分析した組織論研究の古典的存在とされている。だが、今も日本ではその教訓が十分に学ばれているとは言い難い。戦略思考の源流は、古代の『孫子』に始まり、19世紀のクラウゼヴィッツの『戦争論』で深化され、現代でも米国・中国の各軍大学校において真剣に学習されている。これら戦略古典でもって『失敗の本質』に採り上げられた例も含め日本陸海軍の戦いを再検討し、現代日本の賢慮なる戦略思考の活性化を図りたい。
目次
第一章 政治・外交・経済と軍事の関係はどうあるべきか
第二章 ミッドウェー海戦
第三章 ガダルカナル作戦
第四章 インパール作戦
第五章 マリアナ沖海戦
第六章 レイテ海戦
第七章 沖縄戦と終戦経緯
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
27
「失敗の本質」は、戦前の日本軍を組織論から読み解く名著であるが、本書は、同書を下敷きに『孫子』(孫武)『戦争論』(クラウセヴィッツ)で説かれる戦略論等を用いてその再考を試みる。その上で、軍のリーダー層の論理性の足りなさと、陸・海軍への帰属意識の弊害から国全体の最適追及が為されなかった等を指摘。軍令部は「艦隊決戦による長期戦」、山本五十六の連合艦隊は「航空決戦による短期決戦」、海軍内部でさえベクトルに齟齬あり(山本に批判的)等、なるほど指摘多数で刺激的な時間を持つことが出来た。両書併せて平行再読をしたい。2020/05/02
CTC
12
19年12月のちくま新書新刊。著者は『失敗の本質』の著者に名を連ねる84歳の杉之尾氏と、76年生まれの実業家で孫子やクラウゼヴィッツに詳しい西田氏の共著。サブタイトルが本書内容をよく表していると思うが…私も『失敗の本質』を最後に読んだのは10年以上前だから、ちとなんとも申せないところもあるが(どっちにせよ本書冒頭にある通り、『失敗の〜』には本当の本質=「敗れるような戦争を始めた(中略)対極的な視点からの言及」がないのよね)、あの本の副読本として面白い本だと思う。似たような本にはない発見もいくつかあった。2020/09/08
ロッキーのパパ
12
評価は★★★(満点は★★★★★) 旧日本軍への『孫子』と『戦争論』の当てはめがありきたり。この本より、ベースとなった『失敗の本質』と『孫子』を勧める。オリジナルの『失敗の本質』は旧日本軍の作戦行動を組織論の観点で分析した点が斬新だった。『戦争論』はボリュームも多いし、内容も難しいので簡単には勧められない。2020/03/07
俊毅安村
4
孫氏とクラウゼヴィッツを比較した中から日本軍にあてはめて問題点を洗い出すというスタンスですが 戦略の共有とかのレベルじゃなくて、作戦指針は中身が空だったり、ノモンハンのようになんでも現場のせいにして激戦を生き残った教材になるべき現場指揮官たちに自決を強いたり、インパールのように人間関係で作戦計画が左右されたりはザラだし 総力戦研究所で日本軍有利で組んだデータですら無視、ガナルカナルでは二見参謀を無視、セクショナリズムで陸海の協力すらままならないしね。 戦略云々のレベルじゃない気がします。2020/01/19
バッシー
2
孫武とクラウゼヴィッツの慧眼には驚くばかり。当時の日本陸海軍においてこれらの著書が研究されていなかったこと、特に孫氏は意外だった。2023/04/05