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内容説明
1900年9月、第五高等教育学校教授であった夏目漱石は、2年間のイギリス留学へと旅立った。しかしこの留学生活は、後に「ロンドンに住み暮らしたる2年はもっとも不愉快の2年なり」と語られることになる。栄ある第1回官費留学生・漱石の「不愉快」の原因とは一体何だったのか。本書では、漱石自らが失敗作と認める『文学論』と、優れた18世紀英文学論である『文学評論』という、2冊の著作が執筆された背景を探りながら、これらの問いを解き明かしていく。文明開化のシンボルたる「英語」と、実学の対極に位置する「文学」の狭間で揺れる「英文学」という学問の意味。文明開化の担い手としての役割を期待されながら、イギリスで、近代化が人間の精神を衰弱させていく過程を目の当たりにするというジレンマ。漱石のみならず、明治の知識人が不可避に抱え込まざるを得なかった苦悩、そして近代化の残酷な宿命を浮き彫りにした、出色の漱石論である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
TakaUP48
37
難しい本に手を出した。英文学研究の筆者が、いつも心の片隅に気に留めていたのが漱石。小説家になる前の漱石は、官費で英国留学をし帰国後、東大で和名・小泉八雲の後釜授業を引き受ける。漱石の著書「文学論」は、何やら数学的表現で労作ながら高評価ならず。18世紀の英国文学界に触れた「文学概論」は好評を受け、スウィフトの厭世文学「ガリバー旅行記」が「吾輩は猫~」へ影響かと噂も?漱石の「不愉快」の根源は多数あり、書き並べるのは難しい。欧州の近代化に学んでいた日本を「脳天気な国」「内からの文明開化がない国」とも評していた。2021/03/24
猫丸
11
漱石がもともと理系気質を持っていたかどうかはわからない。学生時代、いちど落第してから腹を据えて勉強を始めたら、数学でも語学でもすっきり理解できるようになったらしい。調子に乗って私塾で数学を教えたりもしている。「幾何の問題解説中、交わるはずの直線が黒板上で交わってくれないので閉口した」との述懐も。米山保三郎や寺田寅彦との交流もあった。金之助が「なァるほど」と素直に認められる見識は、主に理系人材から齎された。これは漢籍や落語などの体感的受容の深度、言語的直感について絶対の自信があったからだろう。2022/02/14
Ted
3
'98年7月刊。○2013/09/08
くにお
1
作家・夏目漱石になる前の、英文学者としての夏目金之助に焦点をあてて、漱石のロンドン留学の「不愉快」の原因について著者独自の視点で斬り込んでいく。文明開化の末に待つ神経衰弱を見つめ、作家としての道を歩み出すに至った漱石がイギリス留学の成果物として書いた「壮大な失敗作」と言われる『文学論』と18世紀イギリス文学を具体的に論じた『文学評論』を中心に漱石の心理状態から当時の世界の雰囲気を知ることができる。2011/09/06
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