内容説明
大正末期の1925年に制定された治安維持法。当初は「国体の変革」や「私有財産制度の否認」を目的とする結社―主に共産党を取締り対象としていたが、終戦の年に廃止されるまで運用対象は一般の市民にまで拡大された。
ふつうに暮らすふつうの人々が次々に検挙されたのはなぜか。当事者や遺族の生々しい証言と、公文書に記載された検挙者数のデータから、治安維持法が運用された20年間を検証する。
NHK ETV特集「自由はこうして奪われた~治安維持法 10万人の記録~」の書籍化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
57
NHKの番組制作から生まれた本で、治安維持法検挙者のインタビューという、まさにぎりぎりのタイミングの内容も含む。必要過不足のない法についての説明に加え、検挙の実態、特高警察や思想検事の成立や展開、そして予防的な法行使と転向、日中戦開始後の法改正と対象者の拡大などについて、具体的事例を挙げて迫っている。特に植民地、とりわけ朝鮮において、独立運動を同法の「国体の変革」と位置づけて厳しく弾圧したことについては、初めて知ることができた。証言にある取り調べの過程は、現在も続く冤罪を生む捜査に通じるもの。課題は重い。2020/04/01
ステビア
18
共産党を取り締まるための法律だった治安維持法はどんどん拡大解釈されて何でもありの化物になっていく。特高警察は戦後も公安警察として形を変え生き残ったのだった。朝鮮でも独立運動を取り締まるために適用されていたことを知った。2020/06/18
takeapple
15
大正デモクラシーの後なぜ日本は戦争への道を進めたのかと言う問いの答えの1つがこの治安維持法なんだろう。治安維持法で検挙された人でご存命の方やご遺族の方を訪ねて創られたNHKのETV特集の番組取材班による本である。こういう仕事はNHKならではなのだろうし、NHKには頑張って欲しい。戦前期であっても基本的人権が一切無視された立法状況や司法状況だったかというとそんなことはなく、大日本帝国憲法下の制約はあっても現在と同じように一定の歯止めがあったのに、史上最悪の悪法の成立と拡大解釈と執行を許してしまったところに、2020/06/11
ひかりパパ
15
ちょうどこの本を読んでいる時に、大津地裁が湖東記念病院事件で元看護助手の西山さんのやり直し裁判(再審)の無罪判決を言い渡した。判決では、西山さんの自白の任意性、信用性を否定。本書で日本の刑事司法の問題点である自白偏重は、治安維持法が始まりであることを知った。治安維持法は元々共産党を取り締まるために作られたが、時代とともに共産党とは関わりのない人が検挙されていった。それは権力者による拡大解釈され るような語句が条文にあったからだ。最近の特措法においても拡大解釈を許す余地があり、安心はできない。2020/03/31
onepei
7
テレビ番組を母体としているためか読みやすい このごろよく見かける「緊急事態要項」の議論にも参考になるか。2020/05/04
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