内容説明
オートバイに憑かれた、イギリス人の父親と異母弟たちに、突然呼び寄せられ、マン島の死のロード・レースに挑む、安城はるな。疎外し、拒絶しあう日英の家族チームを死闘に向かわせる、魔のレースの狂熱。マシンに憑かれた父娘の葛藤と激情。血と炎の歓喜を濃密に描く表題作のほか、異邦に捧げられた、若い日本女性の情熱の悲劇を語る、初期傑作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
24
ミステリー色の強い皆川博子さんのアイルランドを軸に展開させる初期作品。表題作にやられました。気まぐれに愛して自分の期待に沿わないと憎悪の目で見てくる異性でもある「父」。一々、希望を抱き、棘を呑み、何も反抗も抗議の言葉もできない女の身である「子ども」。完全に無関心になれずに呪縛される自分を憎悪し、何も気づかずに支配する「父」への憎悪に父親に抱いた気持ちが噴出しそうに。女子におけるエディプス・コンプレックス、糞喰らえ。最後の「スタンレイの影が巨大になった」という文章にはるなに「轢け」と強く、命令していました。2012/11/10
秋良
10
乾いているのに湿っているような、安定の皆川ワールド。感情のせめぎ合いにもがきつつ生きようとする女性の姿が薄っぺらくならないのは、その裏に作者自身の苦悩が隠れているからなのかもしれないと後書きを読んで思った。2017/10/01
ましゅ
3
これはおもしろい。時代背景から作った物語、アクション中心の物語、特定職業の生き様の物語と盛りだくさんでその3つ全てに仕掛けを施してるのがすごい。おまけにヨーロッパ知識も楽しめて、文句なしの作品です。2009/10/03
nightowl
2
IRAと三里塚闘争に参加した若者が重なる「鳩の塔」、バイクレーサーの焦燥と出自の秘密を描く表題作、理由も知らせず人身事故を起こした女性の過去を探る「モンマルトルの浮彫(レリーフ)」の中編集。近作である海外舞台作品の重厚さに慣れていると、この長さでどんでん返しを用いたことにより若干安っぽさが出てしまった気がする。充実期に至るまでの過渡期と言える一冊。2025/04/27
lethe
2
図書館にも無くて。だから古本屋さんで見つけた時は凄く嬉しかった。鳩の塔が、一番のお気に入りかな。でもどのお話もふわふわの綺麗さじゃなくて硬質な綺麗さ、みたいなのを持ってるから、だからこの人の書くお話が好きなんだなぁって再確認。ちょっと不思議な海外旅行からでも帰って来た様な気分です。2011/07/17
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