出雲神話論

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出雲神話論

  • 著者名:三浦佑之【著】
  • 価格 ¥3,762(本体¥3,420)
  • 講談社(2019/11発売)
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  • ISBN:9784065177525

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内容説明

【担当編集ノート】三浦佑之さんといえば、大ベストセラー『口語訳 古事記』の著者にして現代古事記研究を牽引する人です。お嬢さんの三浦しをんさん曰く「コジオタ(古事記オタク)」。その三浦さんの主張の核心こそ「『記紀』の呪縛からの解放」です。簡単にいえば「多くの人は『古事記』と『日本書紀』を似たようなものと考えがちだが、それは大きなまちがい。ふたつの書物はまったく別の意図をもって編纂されたと考えるべきで、その証拠が出雲神話とよばれるものである」ということ。古事記は、上・中・下の3巻から成り、神々のことは上巻において大河小説のように語られます。そのなかで、出雲神話と呼ばれる部分はおおむね以下の部分です。1)アマテラスの弟スサノヲが高天の原を追放され、出雲の国の肥の河の上流にやってきて、コシノヤマタノヲロチを退治し、生贄になって喰われるはずのクシナダヒメ(櫛名田比売)を助けて結婚し、子孫が繁栄する話。2)スサノヲから数えると7代目にあたる子孫オホナムヂが傷ついたウサギを助けたり、命を狙う兄たちから逃れて根の堅州国に行くなどの試練と成長を語る冒険物語。3)オホナムヂがなぜかスサノヲの娘スセリビメと結ばれ、スサノヲからのさまざまな試練を克服し、最後には、スサノヲのもつ呪宝を奪いスセリビメを連れて地上にもどる話。4)逃げるオホナムヂに向かってスサノヲが「大国主」となって地上を支配しろと祝福し、オホナムヂは地上にもどって兄たちを追い払う。スサノヲのことば通りにオホクニヌシとなって地上の主として君臨する話。5)地上の王となったオホクニヌシと女たちをめぐる物語、および国作りを助ける神の話。オホクニヌシとその子孫たちの栄華。じつはこのほとんどが『古事記』のみにある記述であり、『日本書紀』の正伝(書紀の編者が、正統な伝えとして採用した本文)には存在しないのです。なぜ『古事記』にだけ出雲神話があるのか、またそれに続く、俗に「国譲り神話」と称される出雲の滅びの物語にはなにが隠されているのか? ここに徹底的に焦点を絞りながら『古事記』神話、ひいては古代における日本列島の姿を考えてみたいというのが、三浦さんのもくろみです。本書は三浦さんの古事記研究生活50年余の総決算ともいうべき一書です。広く江湖の諸子に問うしだいです。

目次

はじめに──古事記を読むということ
第一章 出雲とはいかなる世界か
第二章 さすらうスサノヲ
第三章 母なるカムムスヒ
第四章 オホナムヂからオホクニヌシへ
第五章 オホクニヌシの国作り
第六章 制圧される出雲
むすびに──遺りつづける記憶

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

さつき

82
600ページ超えの大作。古事記に描かれる出雲神話の世界にどっぷり浸りました。まず驚いたのは広く使われている「国譲り神話」という言葉の初出がおそらく1926年(大正十五年)であること。「国ゆづり」という本来は帝の譲位を表す言葉を、意図を持って出雲制圧神話に当てはめた人がいたのだと思うと愕然としますし、何の疑問も持たずにその言葉を使っていたことが胸に重く感じます。また以前から疑問に感じていたアマテラスとスサノヲのウケヒの場面。なぜ前提条件が示されないのかと思っていましたが長年の疑問が解けました。2023/02/07

南北

55
600ページを超える大作で読み応えがあった。古事記では神代の巻の3分の1の分量を占めながら、日本書紀ではほとんど語られていない出雲神話について論考している。「国譲り神話」は単に出雲を譲る話ではなく、日本海の支配権を含めたものだとする見解やカムムスヒ(カミムスヒ)の神は女神であるとする考えなど興味深い内容がある一方で、高天原を天上界にあるとしたり、北東アジアの神話との関連性を指摘するところなど同意しかねる部分もあった。とはいえ考古学や歴史学など関連する分野での研究につながることが期待できる点も多く見られた。2023/05/07

わたなべよしお

21
 面白かったし、三浦先生の説には概ね、賛成できるのだけれど、こういう細部にわたる論証だと、考古学の弱点がでてしまう。明確な根拠がないものを積み上げて高層ビルを建築しているので、少なくても私に、よく調べたら紙製の柱が多く含まれているのではと、疑ってしまう。現段階では誰にも真実が分からないものを皆でああだこうだと感覚で論議している状態だよね。まぁ、個人的には出雲神話が100%創作だとは思ったことなかったので、僕も感覚的には三浦派ではあるけれど、科学的な検証には耐えないよね、どっちにしても。2022/03/04

うつしみ

14
日本神話の元になった歴史を想像し読み解いていく労作。弥生後期、大陸に近い筑紫、出雲、高志などの日本海側は非常に発展しており、姫川を遡った諏訪周辺までがこの出雲文化圏を形成していた。古代人は船で列島を縦横無尽に行き来しており、造船操船技術に長けた海の民(宗像、淡路、熊野)もまた独自の影響力を持っていた。倭国大乱。この国を纏めあげたのは纒向周辺のヤマト王権だった。記紀は彼らの高天原ー中つ国ー黄泉国の垂直的世界観の神が、諸豪族の神を従える過程を物語っている。強大な出雲文化圏との接続が最も困難だったと思われる。2024/12/14

にしの

11
古事記・日本書紀・出雲風土記、また出雲国造神賀詞などにおける記述の差異から、本来の神話の形を読み解こうとしている著作。中央集権的国家成立前、つまりヤマト政権成立前の日本の姿、出雲・紀伊を中心とした豊穣な日本海ネットワークの痕跡を、神話や現存する寺社・祭祀を通して見出している。古事記がもつ物語としての魅力と、その日本書紀等での改変の裏に隠された政治的・権力的事情が刺激的でグイグイ読むことができた。日本神話がどうも断裂的な感じがするのは、様々な地方・時空の伝承を貼り合わせて作られているからなのだとわかった。2024/11/30

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