内容説明
少しずつ見えなくなる恐怖と闘う勇気の物語。
子どもはだれだって暗やみがこわい。
でも、マファルダがこわいのは、目のなかにある暗やみだ。
真っ暗闇が訪れるまで、長くてもあと半年――。
ある日、9歳のマファルダは、少しずつ視力が失われる難病と診断される。
目が見えなくなるってどういうことだろう?
目隠しして歩いてみる。暗やみでも歩けるのかどうかを試してみたかったのだ。
暗やみでくらすようになったら、どうすれば色がわかるのだろう?
不安は、どんどんふくらんだ。
それから、マファルダは、やっておきたいことのリストを作り始めた。
少しずつ見えなくなっていく、失明の恐怖を、少女の一人称で語られる物語は、読む人の心を打つ。
作者自身の体験にもとづいた、生に対する痛いほどの愛情がこめられた、感動の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chimako
85
表紙の動物はオッティモ・チュルカレだった。そして反対の枝で縫い物をするのはおばあちゃん。マファルダを愛してくれたエステッラも今はもう桜の木の住人になっている。桃色の花の中できっとマファルダを待っているに違いない。マファルダはだんだん目の見えなくなる病気。目の見えなくなる恐怖と闘いながら不可欠なものを見つける勇敢な女の子。そこに現れたフィリッポ。両親の離婚で心の安定を失くしている。けれど優しい。マファルダを理解し助け船を出す。これは障害を持った女の子の話だけれど、その障害を飛び越えて訴えるものがある。2020/09/11
ケロリーヌ@ベルばら同盟
54
マファルダのお気に入りは、学校の桜の木。一番高い枝に登り、心の友『木のぼり男爵』のコジモに話しかけ、猫のオッティモ・チュルカレと一緒に夢を育んでいましたが…。目印の桜の木が、通学路から見える距離が日に日に短くなって、大切なものリストの項目を消す線がどんどん増えて。進行性の目の難病に罹り、失われて行く視力に不安を抱える少女が、両親、学校の用務員、友だちに支えられ、勇敢に現実と立ち向かって行く姿が、繊細に描かれます。柔らかな描線の装画も、とても素敵です。2021/07/03
モモ
41
徐々に視力が失われていく難病になったマファルダ。見えないことが増え動揺する。学校の用務員さんのエステッラに「生きるためには恐怖に打ちかつ必要がある」と諭されマファルダは「とても大切なことのリスト」をつくり力強く歩み始める。大切なことのリストがなんだか泣けてくる。どれもささやかな日常の願いだ。つらいときに自分でも書いてみると良いのかも。ボーイフレンドのフィリッポのさりげない助けもいい。作者のパオラ自身も同じ病気をもち、物語を書くという夢を果たした本。児童書だが大人にも読んでもらいたい。2020/01/04
糸車
35
2020年9月の子どもの本の読書会課題本。徐々に視力を失う病気の10歳の少女。完全に見えなくなる前にやっておきたいリストを作るがそう簡単に病を受け入れるなんて出来ないし、口にしたら本当になってしまいそうで一番おそれていることは誰にも言わない。両親は我が子に辛い思いをさせないよう良かれと思い言わないことがある。そんな中出会った学校の用務員、1学年上の男子は率直な言葉で少女に接してくれる。作者自身が体験した病気を元に書かれただけあってリアル。ページ上部にある足跡と桜の木までの距離が印象深い。2020/09/14
信兵衛
32
失明の恐怖、周囲の人の励まし、素朴で静かな感動を覚える作品です。2020/01/17