樹に聴く - 香る落葉・操る菌類・変幻自在な樹形

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樹に聴く - 香る落葉・操る菌類・変幻自在な樹形

  • 著者名:清和研二
  • 価格 ¥2,640(本体¥2,400)
  • 築地書館(2019/11発売)
  • ポイント 24pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784806715900

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内容説明

森をつくる樹は、さまざまな樹々に囲まれて、どのように暮らし、次世代を育てているのか。
芽生えや種子散布に見る多様な樹種の共存、種ごとに異なる生育環境や菌類との協力、人の暮らしとの関わりまで、日本の森を代表する12種の樹それぞれの生き方を、120点以上の緻密なイラストとともに紹介する。
長年にわたって北海道・東北の森で暮らし、研究を続けてきた著者が語る、身近な樹木の知られざる生活史。

目次

序章
老樹に会いに行く
巨木への遠い道のり
樹々の気持ちを慮る
生育場所ごとに─本書の構成

第1章 川辺に生きる
ケヤキ ─ 欅
大空に向かう
目立たない花
空飛ぶ果実
急斜面に純林を作る
斜面にしがみつく根
もっと遠くに飛ばすために
飛ばない果実
危険を分散する
祖母の引き出し
サワグルミ ─ 沢胡桃
まっすぐな樹
翼のある果実
なぜ川岸に並ぶのか
果実を運ぶのは誰だ
二万個の果実を川に浮かべる
雪解け水
育ての親
幅広い川の中州でも
タネの通り道
文化の程度
カツラ ─ 桂
四季を彩る
渓流のお姫様
数百年を生きる森の女神
三輪車
オノエヤナギ ─ 尾上柳
川辺で生まれ、川辺で死ぬ
川辺の出会い
初夏に満ち溢れる
春に伸ばした枝を夏に落とす
若々しい旅立ち
適地を求めさまよう
チャンスは一度
メス社会
石狩川沿いの大河畔林
オスとメスは棲むところが違う!?
渓畔林を取り戻す
コラム1 枝の寿命─さっさと落とすか、長く持ち続けるか

第2章 老熟した森で暮らす
ブナ ─ 山毛欅
長い冬の終わり
秋に準備する
豊作と凶作─種子を食い尽くされないために
スペシャリストとジェネラリスト
一緒に花を咲かせる
ブナはなぜ群れるのだろう
親木の下から逃げ出す種子
居心地の良いミズナラとホオノキの下
ブナの子供は甘えん坊─近すぎず遠すぎず
土の中の心強い友達─外生菌根菌
混じり合う
スギとブナが混じる森
負の自然遺産
あがりこ─根こそぎにしない
森に祈り、舞う
コラム2 孤立する樹と群れる樹─空間分布を操る菌根菌
チマキザサ─粽笹
林床を覆い尽くす
春と秋に稼ぐ
ギャップから周囲に広がる
生理的統合
長い地下茎─ギャップから林内へ
長い地下茎─林内からギャップへ
またがることによって大きくなる
ヨシカレハ
積丹半島の西海岸のチシマザサ
コラム3 季節の隙間を利用する─小さくても諦めない

第3章 林冠の撹乱を待つ
ノリウツギ ─ 糊空木
夏の訪れ
森の隙間で花を咲かせる
傾く幹
分身の術
したたかに生きる─無性繁殖
再びギャップに巡り合うまで
芥子粒のような芽生え
真冬の花
杖を作る
コブシ ─ 辛夷
春の訪れ
赤と黒
温度変化でギャップを知る
コブシの有性繁殖と無性繁殖
誰が植えたかコブシの林
コラム4 今だ、発芽しよう─種子の大きさで違うギャップ察知の仕組み
キハダ ─ 黄檗
木陰
雌株と雄株
鳥もミツバチも人間も
親心
順次開葉する芽生え
エゾフクロウを送る木幣
コラム5 大きな種子と小さな種子─多種共存を促す種子サイズのばらつき
アカシデ ─ 赤四手
筋肉質な幹
赤い葉を開く
地味な花の一瞬の輝き
鈴なりの果実
尾根筋の明るいギャップが好き
混牧林

第4章 人里近くで生きる
コナラ
里山の白い煙
潜伏芽という保険
実生由来のコナラ林
コナラが群れる不思議を解く─菌根菌を介して子供の面倒を見る
ギャップと菌根菌
コナラの机─新しい里山を目指して
山伏が駆ける
コラム6 頂芽優勢が作る潜伏芽─再生するための萌芽
ヤマナシ─山梨
放牧地に咲く白い花
野生の甘み

あとがき
参考文献
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tamami

52
趣味は焚き火、野生の食物の採取と栽培という大学の先生が、主として北日本の山々で見られる11種類の広葉樹と粽笹について、生態と繁殖の方法、種子から成木になるまでの過程を、長年の研究成果に基づいて記す。それぞれの樹木には著者とともに実践を重ねる研究者がいて、その動静がつぶさに記される。我々が生活の中ではただ木と一括りにする樹木が、このような多様な生き方をしていることに驚かされる。その生き方を何十年という単位で黙々と追いかけ、記録し、森林がより豊かな存在となるべく努力している研究者の営為に頭が下がる思いである。2022/06/28

ジコボー

5
一つのモノを記録し続ける、それを何十年も続けるという事はとてつもない事なのだと思います。まさにライフワーク。緻密に描かれたイラストと観察眼、最初から最後までとても楽しくページめくれました2019/12/22

林克也

3
清和さんの絵が良かった。そして、好きな研究を思う存分することは何ものにも代え難い幸せだと思った。清和さんをはじめとして、この本に名前のあがっている研究者や院生たち、本当に羨ましい。(今の世の中にのさばる、好きな金儲けに邁進する人たちのことは全く羨ましいと思えませんが) 樹も我が子の生存・成長に“こころ”を砕いてあれこれ手を尽くしているということに感慨深いものがあった。 山に行って老木、巨木に触れたい、見たい、そして声を聴きたいという気持ちがムクムクと湧き上がってきた。 もう少し暖かくなったら山に行こう。2020/01/19

孤伏澤つたゐ

2
資料。木々がいかにして子孫を残すか、その戦略や、共生についてのエッセイ。めちゃくちゃ面白かった。2021/02/23

030314

1
読んでいるうちに吸い込まれるおもしろさ。読みながら挿絵をみるとなお、分かりが良い。白黒のスケッチが一見、とっつきにくい感じがしたが、ハナシの理解を良く助ける。アーバスキュラー菌根菌と共生関係のイタヤカエデ、ギャップとの関係、などなど、樹木の力強さと不思議さを同時に感ずる。2021/02/24

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