大豆と人間の歴史 満州帝国・マーガリン・熱帯雨林破壊から遺伝子組み換えまで

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大豆と人間の歴史 満州帝国・マーガリン・熱帯雨林破壊から遺伝子組み換えまで

  • ISBN:9784806715894

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内容説明

人類が初めて手にした戦略作物・大豆。
その始まりは、日本が支配した満州大豆帝国だった。
サラダ油から工業用インク、肥料・飼料、食品・産業素材として広く使われ、
南北アメリカからアフリカまで、世界中で膨大な量が栽培・取引される大豆。
大豆が人間社会に投げかける光と影、
グローバル・ビジネスと社会・環境被害の実態をあますところなく描く。

目次

序章 隠された宝
大豆と戦争
大豆たんぱく質が家畜を太らせる
巨大化する大豆貿易
大豆と根粒菌の共生関係
マーガリンを作る
南米と大豆
さまざまな工業製品への利用

第1章 アジアのルーツ
大豆栽培の始まり
食用に加工され始める
豆腐の誕生
フビライ・ハンがインドネシアに豆腐製造を伝える
大豆を発酵させるアジア人
創意にあふれるアジアの大豆食品

第2章 ヨーロッパの探検家と実験
大航海時代にヨーロッパにもたらされる
ヨーロッパで花開く大豆研究
高まる大豆への関心
第一次世界大戦後に広まった新しい利用方法

第3章 生まれたばかりの国と古代の豆
新大陸と大豆栽培
いかにしてアメリカに大豆食品を根づかせるか
栄養失調の子どもたちに豆乳を
産業・医療への利用──大豆に価値を見出す
フォード社と大豆

第4章 大豆と戦争
兵士の食べ物
ナチスは大豆の重要性に気づいていた
満州に目をつけた日本
捕虜の栄養源となる
食料難のソビエトで渇望された大豆食品
戦時下のイギリスで健康改善に貢献した大豆
戦争に勝つためにはもっと大豆を
戦後のアメリカでは、食用から飼料へ変身する
醤油と豆腐の製造方法が変わった戦後の日本
戦争と結びつけられた大豆

第5章 家畜を肥やす飼料となって
エジプトから始まった鳥インフルエンザ
鶏の血のソーセージ
飼料大豆の普及
骨つき鶏肉が日本にやってきた
スペインでのオリーブオイルvs大豆油
世界征服をねらうアメリカ産大豆
大豆で大量生産される鶏肉
劣悪な環境で飼育される豚たち
安い肉が引き起こす問題
消費者の健康と大量生産された肉
森林を破壊する飼料大豆
大量の排泄物が引き起こす問題

第6章 大豆、南米を席巻する
二つの生き方──ブラジル先住民と大農場主
カタクチイワシ不漁に始まる日本のブラジル進出
二人の大豆王
劣悪な環境に置かれた労働者
アマゾンの森林とブラジル農業
アルゼンチンでの闘い
アルゼンチンが大豆かす輸出第一位へ躍りでる
抗議運動
パラグアイでの大豆栽培をめぐる緊張
「大豆連合共和国」

第7章 大豆が作る世界の景色
法的に疑わしいカーギル社の穀物ターミナル
輸出港へのジャングルを貫く道路建設
なぜ南米にばかり環境保護を押しつけるのか
単一栽培が農業を危機にさらす
雑草対策のためのグリホサート耐性をもつ遺伝子組み換え大豆
遺伝子組み換え作物に対する懸念
除草剤の使用を増やす遺伝子組み換え大豆の栽培
遺伝子組み換え作物が土壌に与える影響
グリホサートの農民への影響
グリホサート耐性大豆と不耕起栽培
農業には欠かせない淡水と環境汚染

第8章 毒か万能薬か
大豆の効果を単純化してはならない
大豆の基本的な知識
大豆に関する三大論争──精子減少・循環器系疾患・乳がん
バイオテクノロジーと豆──遺伝子組み換えの基本的ステップ
遺伝子組み換え作物は「フランケンフード」か?
人体への影響は?
非GE大豆とGE大豆
遺伝子組み換え作物のリスク──二つのケース
GMO表示は義務か必要ないか
遺伝子組み換え食品議論のアイロニー
救援物資としての大豆

第9章 大豆ビジネス、大きなビジネス
大豆のはるかなる旅
先物取引の対象として
大豆をめぐるスキャンダル
懸念を生むアメリカ政府の自国農家への支援
反対運動にあう輸入GE大豆
栽培農家と企業間の不公平な契約
豆乳はミルクか?
大豆業界による土地の強奪

第10章 試練の油  大豆バイオディーゼル
大豆ディーゼル燃料がインドネシアに与える影響
バイオディーゼルと環境
バイオディーゼルの適切な使用法
バイオ燃料の再生可能燃料識別番号(RIN)制度
気候変動への影響
使用済み油からバイオディーゼルを
使用済み油をめぐる争い
大豆油の需要の高まり
世界の片隅にしわ寄せが
自分の身近なところで変革を

おわりに
謝辞
訳者あとがき
参考文献
引用文献
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

石油監査人

18
著者は、米・ジョンズ・ホプキンス大学の大豆プロジェクト前研究部長です。この本では、大豆栽培の歴史に始まり、食文化、栄養学、遺伝子組み換え、環境問題など、大豆に関するあらゆる情報を網羅しています。例えば、日本の「たまり」などの大豆発酵食品についても、正確に記述されていて、著者の知識の深さが分かります。大豆を飼料として利用することで、世界中の人が肉を食べることが可能となり、栄養状態が改善した一方で、森林破壊などの地球環境問題が深刻化しました。大豆を糸口に、現代社会の諸問題を考える契機を与えてくれる良書です。2021/08/21

りょうみや

16
大事の絡んだ人類史。その観点から見れば、和食で使われている大豆の話題の割合はほんの僅か。作者が日本人でないことも影響しているが。大豆の利用の大半は牧畜用で、南米の大豆とそれを飼料にした鶏の話題が本書のけっこうな割合を占める。鶏を「羽の生えた大豆」と表現しているのが印象的。個人的には肉ではなくもっと大豆食品を直に食べて環境負荷を少しでも減らしたい。それ以外の大豆の産業素材としての利用法など知らなかったことが多い。2021/04/25

kamekichi29

7
大豆から取れる油も広く使われていたのですね。良質なタンパク源でもあり、飼料にも使われるし、燃料にもなる。世界中に需要があるだけに、問題も色々あるようで。2025/03/22

イワトコナマズ

7
作付面積が最も広い遺伝子組み換え作物は大豆である。遺伝子組み換え作物の50パーセントに当たる。大豆の大部分は油の原料もしくは飼料用に使われる。油以外に大豆の重要な成分としてレシチンがある。乳化剤や酸化防止剤としてマーガリンやパンやケーキなどたくさんの加工食品に使用される。2020/06/20

T

3
「砂糖」「コンテナ」と並ぶ面白さ。 p192 人間の最も破壊的な活動➖都市への焼夷弾攻撃や有毒な核廃棄物、四〇〇年残るというプラスチックであぶれんばかりのゴミ廃棄場、海洋への石油流出、都市のスモッグ、露天掘りの鉱山や工場からの汚染水の河川への流出などよりも、さまざまな生命体にもっと有害な活動➖は普通の農業である。 現代では森林破壊の原因のおよそ八〇パーセントが、作物の栽培や畜産だ2020/08/06

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